銀河どうしの衝突や合体は初期の宇宙でも起きていたと考えられていますが、銀河の中央を別の銀河が通り抜けていくようなケースはいつの時代でもめずらしいようです。およそ108億光年先の宇宙に、別の銀河との衝突によって中央に大きな穴ができた銀河が見つかったとする研究成果が発表されています。

■現在の宇宙でもまれなタイプの環状銀河を遠方宇宙に発見

環状銀河「R5519」を描いた想像図。リング状の部分では活発な星形成活動が行われているとみられる(Credit: James Josephides, Swinburne Astronomy Productions)

Tiantian Yuan氏(スウィンバーン工科大学)らが観測したのは「ろくぶんぎ座」の方向にある銀河「R5519」です。「ハッブル」宇宙望遠鏡やW.M.ケック天文台の「ケック望遠鏡」などによる観測データをもとにした研究チームの分析によると、R5519の質量は天の川銀河と同程度と推定されるものの、その中央部分には直径3万光年ほどの巨大な穴ができているようです。穴を取り囲むリング状の部分では天の川銀河の50倍というペースで星が形成されているとみられており、Yuan氏はR5519を「火の輪のようです」と表現しています。

発表によると、環状銀河と呼ばれるリング状の姿をした銀河の成因には、銀河自身の作用によって形成される場合と、別の銀河との衝突によって穴ができる場合が考えられるといいます。後者のように衝突でできた環状銀河のほうがまれで、最近の宇宙においては銀河自身の作用によってできた環状銀河と比べて1000分の1ほどしか存在しないといいます。研究チームは、初期の宇宙でも衝突によって環状銀河が形成されることはまれだったと考えています。

ハッブル宇宙望遠鏡によって観測されたR5519(右下)。ハッブルが撮影した複数の画像を合成したもの(Credit: Tiantian Yuan/Hubble Space Telescope)

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R5519は単にめずらしい銀河というだけでなく、銀河の進化についても新たな知見をもたらす存在のようです。研究に参加したKenneth Freeman氏(オーストラリア国立大学)は「衝突によって環状銀河が形成された場合、衝突の『犠牲者』となった銀河は薄い円盤を持っていたことになります。薄い円盤は渦巻銀河の重要な要素です」と指摘します。

Freeman氏は、初期の宇宙における銀河は無秩序な姿をしていたと考えられていたものの、衝突によって環状銀河になったとみられるR5519は宇宙誕生から30億年後という早い時点ですでに円盤を持っていたと考えられることから、今回の研究成果は渦巻銀河がどのように形成されていったのかを深く理解する上で意味のあるものだとしています。

なお、先日、およそ124億光年先の初期宇宙にある銀河「ヴォルフェ円盤(DLA0817g)」がすでに回転する円盤銀河だったとするMarcel Neeleman氏(マックス・プランク天文学研究所)らの研究成果をお伝えしたばかりです。一連の研究成果は、初期宇宙における銀河の進化について再考を迫るものになりそうです。

 

関連:124億年前に整った円盤銀河が存在していた。アルマ望遠鏡の観測で判明

Image Credit: James Josephides, Swinburne Astronomy Productions
Source: W.M.ケック天文台 / ASTRO 3D
文/松村武宏

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