見事なリングの形をした惑星状星雲、その正体は?
「Fine Ring Nebula(ファインリング星雲)」こと惑星状星雲「Shapley 1」(Credit: ESO)

太陽に似た恒星はその晩年、赤色巨星から白色矮星へと進化する過程で周囲にガスを放出するとされています。放出されたガスは白色矮星へと変化していく中心星が放射する強い紫外線によって電離して淡い輝きを放ち、私たちには惑星状星雲として観測されます。

南天の「じょうぎ(定規)座」の方向およそ4900光年先にある「Shapley 1」は、ほぼ円形をしているだけでなく、中心部分が空いたリングのように見える惑星状星雲です。その姿から「Fine Ring Nebula(ファインリング星雲)」とも呼ばれています。

惑星状星雲はいろいろな形をしていますが、その多くは円形楕円形か、もしくは広げた鳥の翼や砂時計に似た形の双極性星雲として観測されており、Shapley 1のように整ったリングの形に見えるものはめずらしいといいます。

そんなShapley 1の正体について、一部の研究者は双極性の構造を持つ星雲ではないかと考えています。整ったリングの形からは想像できませんが、砂時計を上から覗き込むと円形に見えるように、地球から見たShapley 1は双極性星雲を端から覗き込んだ姿なのではないかというわけです。

Shapley 1(左上)とモデル星雲の比較。右上に示されているような構造を持つ星雲を端から覗き込むように見ているのではないかと考えられている(Credit: D. Jones et al.)

双極性星雲の形成には接近して周回する連星が関わっていて、赤色巨星のガスが連星の相互作用によって双極方向に噴出することで鳥の翼や砂時計に似た姿になると考えられています。Shapley 1の中心付近にも約2.9日周期で公転する連星が見つかっていますが、観測の結果から、地球からは2つの星が互いに周回しあう様子がほぼ真上(または真下)から見えていると考えられています。Shapley 1では星雲の対称軸と中心にある連星の公転軸がほとんど揃っている可能性が指摘されていて、双極性星雲の形成に連星が関与していることを示す証拠として注目されています。

この画像はヨーロッパ南天天文台(ESO)の「新技術望遠鏡(NTT:New Technology Telescope)」によって撮影され、2011年8月1日に公開されたものです。

 

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  • Image Credit: ESO
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文/松村武宏