観測技術の進歩により、これまでは理論をもとに予想するしかなかった初期宇宙の姿が少しずつ明らかになっています。今回、チリの「アルマ望遠鏡」などを使った観測によって、宇宙誕生から15億年という初期の宇宙に整った円盤銀河が存在していたとする研究成果が発表されています。

■従来の予想よりも早い時点で秩序のある円盤銀河が形成されていた

初期宇宙の円盤銀河「ヴォルフェ円盤(DLA0817g)」を描いた想像図(Credit: NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello)

Marcel Neeleman(マーセル・ニールマン)氏(マックス・プランク天文学研究所)らが今回観測したのは、かに座の方向およそ123.9億光年先にある銀河「DLA0817g」です。この銀河は2014年に亡くなった天文学者のArthur M. Wolfe氏にちなんで「Wolfe Disk(ヴォルフェ円盤)」とも呼ばれています。

研究チームがアルマ望遠鏡やアメリカの「カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)」、それに「ハッブル」宇宙望遠鏡を使って観測したところ、ヴォルフェ円盤では天の川銀河の10倍以上のペースで星が形成されている様子が明らかになりました。また、アルマ望遠鏡の観測データをもとにヴォルフェ円盤の回転速度を割り出したところ、天の川銀河とほぼ同じ秒速およそ272kmだったことが判明したといいます。

初期の宇宙における銀河は銀河どうしの合体や高温ガスの流入などが相次ぐことで無秩序な形をしており、低温のガスが回転する円盤銀河のように秩序だった姿になるのはビッグバンから60億年ほど経ってからだと考えられてきました。ところが、ヴォルフェ円盤はビッグバンから15億年ほどしか経っていない頃すでに大きな質量を持ちつつ回転する円盤銀河として存在していたとみられており、今回の観測結果は従来の理論に対して疑問を投げかけるものになったといいます。

ひょっとするとヴォルフェ円盤は特別な銀河なのではないかという思いも浮かびますが、そうではなさそうです。2017年にNeeleman氏らは、遠方のクエーサーが発した光の一部を吸収する水素ガスの存在に気が付きました。この水素ガスに取り囲まれていたのがDLA0817g、すなわちヴォルフェ円盤です。

活動的で明るい銀河は見つけやすい反面、偏った性質を持つものばかり観測することになる可能性があります。いっぽう、ヴォルフェ円盤のように明るい天体(クエーサーなど)の光を吸収する様子をもとに銀河を探す場合、性質による偏りを避けやすくなるといいます。Neeleman氏は「整った回転を持つ天体はこれまで私たちが考えていたよりもめずらしいものではなく、初期の宇宙には同じような天体がもっとたくさん潜んでいると考えられます」とコメントしています。

アルマ望遠鏡によって観測されたヴォルフェ円盤。黄色は塵、マゼンタは炭素イオンガスの分布を示す(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), M. Neeleman; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello)

 

Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), M. Neeleman; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello
Source: NRAO / 国立天文台
文/松村武宏

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