惑星は若い恒星を取り囲む原始惑星系円盤のなかで形成されると考えられており、原始惑星系円盤を観測できる恒星は多くの研究者から注目されています。今回、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の望遠鏡を用いて、今まさに惑星の形成が進行しているとみられる様子を観測したとする研究成果が発表されています。
形成途上の惑星の存在を示すとみられる特徴を確認
Anthony Boccaletti氏(パリ天文台)らの研究チームは、ESOの「超大型望遠鏡(VLT)」に設置されている観測装置「SPHERE」を使い、ぎょしゃ座の方向およそ520光年先にある若い星「ぎょしゃ座AB星(AB Aurigae)」の原始惑星系円盤を赤外線の波長で観測しました。その結果、星からおよそ30天文単位(太陽から海王星までの平均距離とほぼ同じ)のところに、円盤を構成する物質の流れがより合わされたように見える明るい部分を確認しました。研究チームは、この部分で惑星が形成されつつあると考えています。
ぎょしゃ座AB星では原始惑星系円盤の存在がすでに知られていて、これまでにも国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」やチリの「アルマ望遠鏡」によって観測されています。アルマ望遠鏡による観測では2本のらせん構造が見つかっており、2017年に発表された研究では、この構造が惑星の形成と関係している可能性が指摘されていました。
今回の研究に参加したAnne Dutrey氏によると、形成中の惑星を中心にガスや塵の流れがより合わさったように見える構造は、惑星形成モデルでも存在が予想されているといいます。VLTによる今回の観測ではアルマ望遠鏡が捉えたらせん構造の1つにこのような部分が見つかっており、形成されて間もない惑星がここで物質を得て成長し続けているとみられています。
研究を主導したBoccaletti氏は、惑星の形成におけるガスの関与をより詳しく観測できるようになるはずだとして、ESOが建設を進めている「欧州超大型望遠鏡(ELT)」の完成に期待を寄せています。
Image Credit: ESO/Boccaletti et al.
Source: ESO
文/松村武宏