地球の水は小天体の衝突ではなく、星間分子雲に含まれる有機物から生成されたのかもしれない(Credit: NASA)

「水の惑星」とも呼ばれる地球の水をもたらしたのは、これまで彗星や小惑星だったのではないかと考えられてきました。今回、実験結果や近年の研究をもとに、星間空間に存在していた有機物から地球の水がもたらされた可能性を指摘する研究成果が発表されています。

■星間分子雲中の塵に含まれる有機物が加熱されて水が生じた可能性

香内晃氏(北海道大学)らの研究チームは、水素分子や塵でできている星間分子雲に含まれている有機物を再現し、太陽からおよそ2.5天文単位のところにある雪線(※)の内側を模した環境でどのように変化するかを実験で確かめました。再現された有機物を加熱した結果、温度が摂氏350度になると有機物からが、摂氏400度では水に加えて石油が生成されることが明らかになったとしています。

※…水が凝結して氷になるか、昇華するかの境界

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氷とは違い、有機物は雪線の内側でも残っていたとみられることから、加熱された有機物から生成された水が地球の水の起源になり得ると研究チームは考えています。なお、実験において加熱した有機物からは水だけでなく地球で産出するものによく似た石油も生成されたことから、小惑星や氷でできた衛星の内部に大量の石油が埋蔵されている可能性にも触れています。

星間分子雲中の有機物を模したもの(左)と、摂氏400度に加熱した結果(右)。加熱後の有機物からは水と石油が生成された(Credit: H. Nakano et al. 2020)

従来の研究では、水が昇華してしまう雪線の内側で誕生した地球の水は、雪線の外側で形成された彗星C型小惑星(水や有機物を多く含む小惑星)が主な供給源と考えられてきました。

ところが、彗星については「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P/Churyumov-Gerasimenko)」に関する研究から、彗星がもたらした地球の水は全体の1パーセント未満に過ぎないとみられる点が指摘されています。いっぽう、C型小惑星が水の供給源と仮定して試算した場合、地球の水が本来よりも多くなりすぎてしまうという問題があったといいます。

研究チームは、従来の惑星形成に関する研究では惑星の材料として鉱物と氷だけが考慮されてきたものの、彗星やそのもとになった星間分子雲では鉱物、氷、有機物がそれぞれほぼ等しい割合で存在している点に言及。水の氷が昇華してしまう雪線より内側の地球や火星といった惑星の水は、星間分子雲中の有機物が主な起源だった可能性を指摘しています。

 

Image Credit: H. Nakano et al.
Source: 北海道大学
文/松村武宏

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