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一般的な銀河よりも強い電波を発している電波銀河のなかには、銀河中心核から噴出したジェットがX字形または翼の形に観測されるものがあります。ジェットがこのような形になるはっきりとした理由はこれまでわかっていませんでしたが、その仕組みが明らかになったとする研究成果が発表されています。

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■一部が逆流してきたジェットの流れが別の方向に曲げられていた

MeerKATによる電波銀河「PKS 2014-55」の観測結果。X字形に見える古い時代のジェットの要にあたる部分では、新しいジェットの噴出が始まっている(Credit: NRAO/AUI/NSF; SARAO; DES.)

William Cotton氏(NRAO:アメリカ国立電波天文台)らの研究チームは、南アフリカ電波天文台(SARAO)の電波望遠鏡「MeerKAT」を使い、X字形のジェットを持つ電波銀河のひとつとして知られる「PKS 2014-55」を観測しました。PKS 2014-55は南天の「ぼうえんきょう(望遠鏡)座」の方向およそ8億光年先にあります。

合計64基の電波望遠鏡で構成されるMeerKATを使った従来よりも高い解像度での観測による結果、PKS 2014-55の銀河中心核から双方向に噴出したジェットの一部が銀河へ落下するように逆流した際、その向きが銀河に受け流されるようにして別の方向へと曲げられたことで、特徴的なX字形の構造が形作られたことが明らかになったといいます。

研究チームによる今回の観測では、PKS 2014-55の銀河中心核から新しいジェットが噴出し始めている様子が確認されており、その噴出方向が古いX字形のジェットのうち長い部分と揃っていることがわかりました。このことから、長い部分は古い時代に噴出したジェットの本体とみられています。この古いジェットの一部が銀河に向かって逆流し、流れの向きが変えられて平仮名の「し」のような形が2組できたことで、全体ではX字形に見えるようになったというわけです。

なお、X字形が形成される理由としては、これまでに「ジェットを噴出するブラックホールの自転軸の向きが変化した」「2つのブラックホールがジェットの形成に関わっている」といった超大質量ブラックホールの関与を指摘する説の他に、「銀河に落下した物質の向きが変えられた」とする説も提唱されていました。今回のCotton氏らによる研究成果は、最後の説を支持するものとなります。

今回の研究成果の解説図。オレンジの点線は銀河円盤を示す。逆流したジェットの一部が向きを変えられた(左の全体図の白い矢印)ことでX字形が形成されたとみられる。また、新しいジェット(右の拡大図の中央付近)の噴出方向は古いジェットのうち長い部分と揃っている(Credit: UP; NRAO/AUI/NSF; SARAO; DES.)

 

Image Credit: NRAO/AUI/NSF; SARAO; DES.
Source: 南アフリカ電波天文台
文/松村武宏

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