太陽系外惑星のイメージ図(Credit: NASA/JPL-Caltech/MIT)

「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡(NASA)、「欧州超大型望遠鏡(ELT)」(ヨーロッパ南天天文台:ESO)、「30m望遠鏡(TMT)」(国立天文台など)といった次世代の観測手段が登場間近の現在、これらの性能をフル活用した太陽系外惑星探査に研究者の期待も高まっています。今回、系外惑星において生命体の兆候を探す上で注目すべき環境のひとつとして「水素の豊富な大気」を提案する研究成果が発表されています。

■水素ガスのもとでも大腸菌と酵母が増殖することを実験で確認

系外惑星が見つかると、酸素は存在するか、快適な温度が保たれているかといった、地球の生命体を支えられる環境を持つかどうかに注目が集まります。ただ、人類が知る生命体が現時点では地球のものに限られるとはいえ、地球に似た環境ばかりに注目していては、別の環境に息づく生命体の兆候を見落としてしまうかもしれません。

Sara Seager氏(マサチューセッツ工科大学)は、そのような事態を避けたいと願う天文学者の一人です。Seager氏らの研究チームは、地球の大気とは異なる環境でも地球の微生物が生存できるかどうかを確かめるために、大腸菌酵母を水素ガスなどの下で増殖させる培養実験を行いました。80時間に渡る実験の結果、水素ガスの環境下に置かれた大腸菌と酵母はどちらも増殖し続けたことが確認されています。

大腸菌や酵母は無酸素環境でも生存できますが、今回の実験では純粋な水素ガスの大気がこれらの微生物に悪影響を及ぼさないことを実証するのが目的のひとつでした。Seager氏は、系外惑星における地球外生命体探査が進められていく上で、天文学者と生物学者のコラボレーションが促進されていくことに期待を寄せています。

Seager氏が水素環境に注目する理由は、観測のしやすさにあります。系外惑星の大気を調べるには、系外惑星が主星の手前を横切る「トランジット」を起こしたときに、系外惑星の大気を通過してきた主星の光を分析する手法が用いられます。軽い水素を主体とする大気は窒素や酸素を主体とする大気よりも高高度まで広がりやすく、大気の組成を比較的調べやすいのです。

「生命が存在し得る環境は多様性に富んでいます。地球の微生物でも水素環境下で生存できるのですから、地球外生命体を実際に見つけようとするなら、水素に富んだ大気を持つ系外惑星も候補に含めるべきです」とSeager氏はコメントしています。

主星(左)の光を利用して系外惑星(中央下)の大気組成を調べる手法のイメージ図。直接地球に届いた主星の光と系外惑星の大気を通過してきた光を比較することで、大気の組成を分析することができる(Credit: ESO/M. Kornmesser)

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/MIT
Source: MIT News
文/松村武宏

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