人類にとって最も身近な恒星である太陽は、長年記録されている黒点の観測結果をはじめ、樹木の年輪や氷床コアに残された放射性同位体を分析することによって、過去1万年近くに渡る活動の歴史を探ることができます。今回、太陽に似た300個以上の恒星の明るさの変動を分析した結果、太陽の明るさが他の星々ほど変動していない様子が明らかになったとする研究成果が発表されています。
■太陽の明るさの変動幅はよく似た恒星と比べて5分の1に留まる
Timo Reinhold氏(マックス・プランク太陽系研究所(MPS)、ドイツ)らの研究チームは、表面温度、年齢、重元素(水素やヘリウムよりも重い元素)の比率、自転周期などが太陽に近い恒星を複数ピックアップして太陽と比較することで、人類が知る太陽の活動レベルについての理解を深めようと試みました。
NASAの宇宙望遠鏡「ケプラー」によって観測された太陽に似た恒星369個における2009年から2013年までの明るさの変動を分析した結果、同時期の太陽の平均的な明るさの変動幅が約0.07パーセントだったのに対し、これらの恒星の明るさは太陽の5倍も大きく変動していたことが判明したといいます。研究に参加したAlexander Shapiro氏(MPS)は「太陽に似た星々が太陽よりもずっと活動的であることに驚きました」と振り返ります。
研究チームでは、太陽は同種の恒星と比べて穏やかな性質を持つ可能性があるものの、人類が知り得る1万年という期間はおよそ46億年前に誕生したとされる太陽の歴史に対して短く、現在の太陽はたまたま静けさを保っている期間にあたる可能性を指摘。Shapiro氏は「太陽も本質的にはこのような活動ができるということを、これらの星々は示しているとも考えられます」と語っています。
なお、太陽には似ているものの自転周期が判明していない2500個以上の恒星についても明るさの変動を分析したところ、自転周期が判明している恒星ほどの変動幅は確認されなかったといいます。研究チームでは、自転周期が判明している恒星と判明していない恒星のあいだに何らかの違いが存在する可能性にも言及しています。
Image Credit: NASA/SDO
Source: MPS
文/松村武宏