2020年1月31日(日本時間)に運用を終えたNASAの宇宙望遠鏡「スピッツァー」は、2003年8月の打ち上げ以来、16年以上に渡りさまざまな天体を赤外線で観測し続けました。今回、運用終了間際のスピッツァーによって撮影された星雲の画像が公開されています。

■運用終了の5日前に撮影された「カリフォルニア星雲」

スピッツァーが撮影したカリフォルニア星雲の一部(疑似カラー)。3.6μm(水色)と4.5μm(赤)の赤外線で撮影された画像を合成したもの。左右には片方の波長のみで撮影された部分が残されている(Credit: NASA/JPL-Caltech)

スピッツァーによって撮影されたのは、「ペルセウス座」の方向およそ1000光年先にある散光星雲「NGC 1499」の一部です。長時間露光で撮影したときに現れる姿がカリフォルニア州のように見えることから、NGC 1499は「カリフォルニア星雲」とも呼ばれています。撮影されたのは、スピッツァーが運用を終える5日前のことでした。

上掲の画像は三色旗(トリコロール)のようになっていますが、これは2つの波長で捉えた赤外線画像を着色し(水色は3.6μm、赤は4.5μm)、同じ範囲が撮影された部分を重ねて1つに合成しているためで、実際にこう見えるわけではありません。カリフォルニア星雲を可視光(人の目に見える光)で撮影すると、すぐ近くにある「ペルセウス座クシー星」が放射する紫外線で電離し、赤い光を放つ水素ガスの分布が見えてきます。いっぽうスピッツァーのように赤外線で撮影すると、可視光や紫外線を吸収し、赤外線を放出する塵の分布が見えてきます。

スピッツァーによる撮影範囲(白枠)を示した図。背景は可視光で撮影したカリフォルニア星雲で、右下にはペルセウス座クシー星が写っている(Credit: NASA/JPL-Caltech/Palomar Digitized Sky Survey)

カリフォルニア星雲はこれまでスピッツァーによる研究対象になったことはありませんでしたが、スピッツァーの運用最終週に観測できる方向にあったことや、科学的な成果が期待できたことから、観測対象に選ばれたようです。カリフォルニア工科大学スピッツァー科学センターのSean Carey氏は、「将来、この観測データをもとにした興味深い研究が行われることでしょう。スピッツァーのデータアーカイブは、科学コミュニティーに対して開かれたもう一つの空です」とコメントしています。

なお、スピッツァーを運用してきたNASAのジェット推進研究所(JPL)およびカリフォルニア工科大学は、どちらもカリフォルニア州にある組織です。最終盤の観測対象がカリフォルニアの名を冠した星雲になったというのも、不思議なめぐり合わせを感じさせます。

 

関連:ありがとう、スピッツァー。16年以上に渡る運用が終了

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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