
ブラックホールはその質量によって軽いほうから「恒星質量ブラックホール」「中間質量ブラックホール」「超大質量ブラックホール」の3種類に分類されています。今回、観測するのが難しいとされる「中間質量ブラックホール」が存在する確かな証拠をつかんだとする研究成果が発表されました。
■質量は太陽の5万倍、破壊された矮小銀河の名残とみられる星団に存在

Dacheng Lin氏(ニューハンプシャー大学、アメリカ)らの研究チームによって中間質量ブラックホールの可能性が高いとされたのは、欧州宇宙機関(ESA)のX線天文衛星「XMM-Newton」の観測データから発見されたX線源「3XMM J215022.4-055108」(以下「J2150-0551」)です。
研究チームによると、J2150-0551は地球からおよそ7億4000万光年離れたレンズ状銀河のすぐ外側にあり、太陽の5万倍以上の質量を持つ中間質量ブラックホールとされています。J2150-0551から放たれたX線はXMM-NewtonをはじめNASAのX線天文衛星「チャンドラ」や「スウィフト」でも検出されており、中間質量ブラックホールに近づきすぎたことで引き裂かれ、ブラックホールに飲み込まれつつある恒星のガスからX線が放出されたものとみられています。
J2150-0551はレンズ状銀河の中心からは離れた方向に検出されたため超大質量ブラックホールの可能性は低く、研究チームは2018年の時点でJ2150-0551が発見例の少ない中間質量ブラックホールの候補であると考えていましたが、天の川銀河のなかにある天体がX線の発生源である可能性もあったため、さらなる確認が必要でした。
そこで研究チームは「ハッブル」宇宙望遠鏡を使い、J2150-0551の追加観測を実施しました。その結果、J2150-0551が天の川銀河の天体ではないことや、レンズ状銀河の近くにある星団の内部に位置することが確認されました。この星団はかつて存在していた矮小銀河の名残であり、過去にレンズ状銀河と相互作用したことで破壊され、中心部分だけが残ったものと研究チームでは考えています。
中間質量ブラックホールは超大質量ブラックホールよりも軽く、周辺のガスや星を絶えず引き寄せ飲み込むほどには重力が強くないため活動性が低いことから、観測するには恒星がたまたま近づき破壊されるのを待たねばならなかったといいます。研究に参加したNatalie Webb氏(トゥールーズ大学、フランス)は、中間質量ブラックホールの起源や進化を理解することは、超大質量ブラックホールが存在する理由を解き明かすことにつながるとコメントしています。

Image Credit: ESA/Hubble, M. Kornmesser
Source: ESA/Hubble / ESA
文/松村武宏