星の残骸から新たな世代へ…冬空に輝く星々のゆりかご
ヨーロッパ南天天文台の「VLT Survey Telescope(VST)」によって撮影された「オリオン大星雲」(M42)(Credit: ESO/G. Beccari)

今日の宇宙画像:オリオン大星雲(M42)

複雑に広がるガスが若い星々に照らし出されているこの天体は、地球からおよそ1350光年先にある散光星雲「オリオン大星雲」天文学者シャルル・メシエによる「メシエ・カタログ」には「M42」として収録されています。

オリオン大星雲は「オリオン座」の三つ星の近くという探しやすい場所にあり、肉眼でも見えることから、その輝きを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。翼を広げた鳥にもたとえられるオリオン大星雲は太陽系に比較的近い星形成領域のひとつとして知られており、大質量星から低質量星までさまざまな恒星が生み出されています。

2017年に発表された研究では、オリオン大星雲にある若い恒星の自転速度を調べて比較したところ、誕生から300万歳以下とみられる星々の世代が3つに分かれていることが明らかになりました。この研究成果から、オリオン大星雲ではバースト的な星形成活動によって急速に星々が生み出される過程が繰り返された可能性が指摘されています。

肉眼では見えませんが、オリオン座には「バーナードループ」と呼ばれる超新星残骸/HII領域が広がっていて、オリオン大星雲もその一部と考えられています。自ら輝く恒星としての最期ともいえる超新星爆発によって撒き散らされたガスや塵から新たな世代の星々が誕生していく様子には、他の生き物の糧となったり土に還ったりすることで命がつながっていく地球の生命を連想します。

冒頭の画像は、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の「VLT Survey Telescope(VST)」に設置された広視野光学観測用の装置「OmegaCAM」によって撮影されました。

オリオン座付近を長時間露光にて撮影・処理した画像。ベテルギウス(中央上のオレンジ色)の下に見える円弧状の構造がバーナードループ。オリオン大星雲はバーナードループが囲む領域の中心やや下にある(Credit: Stanislav Volskiy)

 

Image Credit: ESO/G. Beccari
Source: ESO / APOD
文/松村武宏