数千個が発見されている太陽系外惑星のなかには、地球にいるような生命が存在できる環境を持つことが期待される惑星も幾つか存在しています。そんな「ハビタブル惑星」とも呼ばれる系外惑星の捜索に利用できるテンプレートを検討・作成した研究成果が発表されています。
■地球の各時代における大気組成にあわせた5種類のテンプレート
何光年も離れた系外惑星に生命が存在できるかどうかを調べる方法として、系外惑星の大気組成を分析する手法があげられます。地球の生命に欠かせない水(水蒸気)はもとより、酸素、メタン、二酸化炭素といった生命活動にも結びついた物質の比率を調べることで、その惑星に地球のような生命が存在する可能性が高いか低いかを判断できます。
系外惑星の大気組成は、大気を通過してきた主星(恒星)の光を虹の七色のように波長ごとに分ける「分光観測」にかけることで調べることができます。今回Lisa Kaltenegger氏(コーネル大学)らの研究チームが作成したのは、この分光観測で用いることを想定したテンプレートです。
Kaltenegger氏らはハビタブル惑星を探すにあたり、現在の地球だけを手本とするのではなく、過去の地球にも目を向けるべきだと考えました。今の地球の大気は約21パーセントを酸素が占めていますが、過去の地球では酸素濃度がより低く、生命が誕生したばかりの頃はほとんど酸素がなかったとされています。そのため、「生命はいるが、大気組成は今の地球と異なる」ような惑星を見つけるには、地球の各時代にあわせた手本が参考になるはずです。
そこで研究チームは、地球を生命誕生前の時代から現代まで5つの時代に分けた上で、それぞれの時代における大気組成の特徴にあわせたテンプレートを用意しました。分光観測で得られた系外惑星の大気組成をこのテンプレートと比較することで、その惑星が地球の歴史でいえばどの段階にあるのかがわかるというわけです。テンプレートの特徴を簡単にまとめると、次のようになります(実際には酸素や二酸化炭素以外にメタンやオゾンなども考慮されています)。
・現代:21パーセントの酸素、少ない二酸化炭素
・8億~5億年前:2.1パーセントの酸素、1パーセントの二酸化炭素
・20億~10億年前:0.21パーセントの酸素、1パーセントの二酸化炭素
・35億年前:希薄な酸素、1パーセントの二酸化炭素
・39億年前:希薄な酸素、10パーセントの二酸化炭素
Kaltenegger氏は、NASAの新しい宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」(2021年3月打ち上げ予定も新型コロナウイルスの影響で開発は一時停止中)や、ヨーロッパ南天天文台(ESO)が建設中の「欧州超大型望遠鏡(ELT)」(2025年観測開始予定)といった、次世代の観測手段による系外惑星の大気に対する分光観測に期待。「地球の過去を鍵とすることで、系外惑星における生命の徴候がより見つけやすくなる」とコメントしています。
Image Credit: NASA Ames/JPL-Caltech
Source: コーネル大学
文/松村武宏