土星探査機カッシーニが撮影した土星の衛星レア(手前)とタイタン(奥)。レアからは約180万km、タイタンからは約250万km離れている(Credit: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)

 

現在全部で82個が知られている土星の衛星。そのなかでも最大の「タイタン」は、他の衛星よりもかなり大きな存在です。今回、ガス惑星においてタイタンのような「1つだけ大きな衛星」がどのようにして誕生したのか、その謎に迫った研究成果が発表されました。

■誕生した衛星が惑星に引き込まれなくなる「安全地帯」が存在していた?

土星の衛星の比較図(上段)と、環や衛星の位置関係などを示した図(下段)。上段右寄りのひときわ大きな衛星がタイタン(Titan)で、次に大きなレア(Rhea)はタイタンに重なるように描かれている(Credit: NASA/JPL/David Seal)

 

窒素を主成分とした濃密な大気を持つタイタンは土星の衛星のなかでも際立って大きな衛星で、2番目に大きな「レア」に対しておよそ50倍もの質量があります。今回、藤井悠里氏(名古屋大学)と荻原正博氏(国立天文台)はタイタン誕生の謎を解明すべく、誕生したばかりのガス惑星を取り囲むガスや塵の円盤(周惑星円盤)の精密なシミュレーションを行いました。

ガス惑星の初期の姿に関する過去の研究では、誕生したばかりのガス惑星を取り囲む周惑星円盤のなかで、木星のガリレオ衛星(※)ように「複数の大きな衛星」が誕生する可能性は示されてきたものの、タイタンのように1つだけ大きな衛星がどのようにして誕生したのか、その理由は謎のままでした。

※…木星の衛星「イオ」「エウロパ」「ガニメデ」「カリスト」のこと。

周惑星円盤の詳細な温度分布を反映したシミュレーションの結果、ガス惑星からその直径にして10倍~50倍ほど離れたところにガスの温度差によって生じた「安全地帯」のような場所があり、ここに入り込んだ衛星は円盤内のガスの働きによってガス惑星から遠ざかるような力を受け、円盤が消え去るまで存続し続けられる可能性が示されました。

いっぽう、この安全地帯に入らなかった衛星はガスの働きにより周回する速度が遅くなることで少しずつ惑星に近づいていき、最終的にはガス惑星に飲み込まれてしまいます。今回の研究成果は、土星におけるタイタンのような衛星がガス惑星の周囲に誕生し得ることを初めて示したものとなります。

藤井氏と荻原氏は、この結果をもとにタイタンの起源に関する研究が進展することに期待を寄せるとともに、太陽系外惑星の衛星が数多く見つかるようになれば、今回のシミュレーション結果についての議論も活発になるだろうとコメントしています。

誕生したばかりのガス惑星(右)と、ガス惑星を取り囲む周惑星円盤で衛星が形成される様子を描いたイメージ図(Credit: 名古屋大学)

 

関連
火星やタイタンの夕暮れ時の空はどんな色?NASA公開のシミュレーション動画
タイタンの赤道付近には干上がった湖がある? レーダー観測の謎に迫る
タイタンは毎年11cmずつ土星から離れている。予想の100倍以上のペース
高級チョコみたい!タイタン全体の地質図が完成。緯度ごとに異なる特徴が明らかに
衛星タイタンの盛り上がった縁の湖は過去の気候変動を物語っている?

Image Credit: 名古屋大学
Source: 国立天文台
文/松村武宏

 オススメ関連記事