太陽のような恒星が年老いると巨大化して赤色巨星になり、周囲にガスや塵を放出して白色矮星に進化すると考えられています。今回、南米・チリの「アルマ望遠鏡」によって、ジェットを噴出する年老いた星とその周辺の様子が従来以上の高い解像度で捉えられました。

■わずか100年程度のジェット噴出が複雑な惑星状星雲の形を決める

アルマ望遠鏡を使い電波で観測した「W43A」。中心から高速で噴出するジェット(青)や、ジェットに吹き飛ばされつつある塵(オレンジ)、低速で流れるガス(緑)が捉えられている(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Tafoya et al.)

今回観測されたのは、「わし座」の方向およそ7200光年先にある連星「W43A」です。W43Aでは質量が重いほうの主星が先に老いてガスなどを放出し、今まさに惑星状星雲が形成されようとしている段階にあるとみられています。

今井裕氏(鹿児島大学)らの研究チームがアルマ望遠鏡を使ってW43Aを観測したところ、連星から秒速175kmで噴き出すジェットと、連星周辺のガスや塵がジェットに吹き飛ばされつつある様子を鮮明に捉えることに成功しました。連星の主星と伴星を区別することはできないものの、このジェットは恒星としての死を迎えつつある主星から噴き出しているものとみられています。

惑星状星雲は、老いた星から放出されたガスが1万年ほどのあいだだけ輝いて見える天体です。これまでsoraeでも紹介してきたように、その形は整った円形だけでなく、生き物の目、鳥や蝶、アルファベットの「S」など、バリエーション豊かであることが知られています。

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こうした惑星状星雲のうち、円形のものは単独の星が老いて白色矮星へと進化する過程で形成されたものとみられていますが、複雑なものは連星が形成に関わっていると考えられています。先に老いてガスを放出し芯だけが残った主星に、まだ元気な伴星のガスが流れ込んだとき、その一部がジェットとなって主星から噴き出し、周囲に放出されたガスや塵を吹き散らかすことで複雑な形状になるのではないか、というのです。

老いた星からのジェットの噴出は、宇宙のタイムスケールからすればごくわずか、100年未満しか続かないとみられています。分析の結果、W43Aで観測されたジェットは噴出開始からまだ60年しか経っていないことがわかりました。論文の筆頭著者ダニエル・タフォヤ氏(チャルマース工科大学、スウェーデン)が「一人の人間が生きている間にその動きを追跡することができる」と語るように、急速に進む現象の一瞬を観測できたことになります。

今回の研究成果は、惑星状星雲が形成されるメカニズムについて重要な知見をもたらすとともに、この宇宙における物質の進化についての理解を深めることにもつながると期待されています。

アルマ望遠鏡の観測結果をもとに描かれたW43Aの想像図(Credit: NAOJ)

 

Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Tafoya et al.
Source: 国立天文台
文/松村武宏

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