何百億、何千億もの星々が形成する銀河。そんな銀河が集まった集団は「銀河団」と呼ばれます。地球からおよそ3億9000万光年先にある「へびつかい座銀河団」において、観測史上最大規模のエネルギー放出にともなう痕跡が見つかったことをNASAが発表しました。

■ブラックホールから噴き出すジェットがガスを吹き飛ばして空洞を形成

今回の研究におけるへびつかい座銀河団の観測結果の合成画像。紫はX線、青は電波を示す。背景のX線は「XMM-Newton」、右下の挿入画像におけるX線は「チャンドラ」、電波は「巨大メートル波電波望遠鏡(GMRT)」の観測データ(Credit: X-ray: Chandra: NASA/CXC/NRL/S. Giacintucci, et al., XMM-Newton: ESA/XMM-Newton; Radio: NCRA/TIFR/GMRT; Infrared: 2MASS/UMass/IPAC-Caltech/NASA/NSF Astronomy Research Laboratory/AURA)

銀河が集まって形成されている銀河団には、電離してX線を放つ高温のガスが大量に存在しています。2016年、NASAのX線観測衛星「チャンドラ」の観測によって、へびつかい座銀河団のガスに巨大な空洞が存在する可能性が示されました。

今回、Simona Giacintucci氏(アメリカ海軍調査研究所)らの研究チームが追加観測を実施したところ、天の川銀河(円盤部の直径およそ10万光年)を15個並べられるほどの巨大な空洞が、へびつかい座銀河団の高温ガスに存在していたことが確認されました。観測結果の合成画像を見ると、で示されたX線(高温のガスに由来)とで示された電波(加速された電子に由来)を放つ領域が、白い点線で示された境界を挟んで分布していることがわかります。この境界が、ガスの集まりに形成された巨大な空洞の縁にあたるとされています。

こうした空洞の形成には、銀河中心に存在する超大質量ブラックホールが関わっていると考えられています。ブラックホールは周囲のガスなどを吸い込んで成長しますが、すべての物質が吸い込まれるのではなく、一部の物質はジェットとなって高速で噴出されます。たとえば、初めて直接撮像された楕円銀河「M87」の超大質量ブラックホールは光速の99パーセント以上の速度でジェットを噴出しており、その長さは数千光年に達しています。このようなジェットがガスを吹き飛ばすように衝突することで、ガスに空洞が生じるとみられています。

楕円銀河「M87」の中心部から噴出するジェット(Credit: The Hubble Heritage Team (STScI/AURA) and NASA/ESA)

同様の空洞は「きりん座」の方向にある銀河団「MS 0735+74」でも見つかっていますが、へびつかい座銀河団の空洞を生み出すのに必要なエネルギーの量はこの約5倍、一般的な銀河団と比較すれば数百倍から数千倍に達すると見積もられています。銀河が幾つも入ってしまうほど巨大な空洞を形成したへびつかい座銀河団におけるブラックホールの活動を、NASAは「記録破りの爆発(Record-breaking Explosion)」と表現しています。

今回のGiacintucci氏らによる研究では、NASAのチャンドラに加えて、欧州宇宙機関のX線観測衛星「XMM-Newton」、オーストラリアの低周波電波望遠鏡「マーチソン・ワイドフィールド・アレイ(MWA)」、インドの「巨大メートル波電波望遠鏡(GMRT)」が観測に使用されました。なお、観測結果からはジェットの噴出が継続していることを示すデータは確認されておらず、空洞を形成するような活動は静まっているとみられています。

 

Image Credit: X-ray: Chandra: NASA/CXC/NRL/S. Giacintucci, et al., XMM-Newton: ESA/XMM-Newton; Radio: NCRA/TIFR/GMRT; Infrared: 2MASS/UMass/IPAC-Caltech/NASA/NSF Astronomy Research Laboratory/AURA
Source: NASA
文/松村武宏

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