火星と木星の公転軌道のあいだに位置する小惑星帯。そのなかでも最大の小惑星である「パラス」(直径およそ510km)表面の詳細な様子が、今回初めて明らかになりました。数多くのクレーターに覆われたその表面は、激しい衝突が繰り返されてきた歴史を物語っています。

■傾いた軌道が速度差をもたらし、パラスに激しい衝突の痕跡を残させた

【▲超大型望遠鏡(VLT)によって撮影された小惑星「パラス」。右は北半球、左は南半球を写したもの(Credit: ESO/M. Marsset et al./MISTRAL algorithm (ONERA/CNRS))】

こちらの画像は、Michaël Marsset氏(マサチューセッツ工科大学、アメリカ)らの研究チームがヨーロッパ南天天文台(ESO)の「超大型望遠鏡(VLT)」によって撮影したパラスの表面。右はパラスの北半球、左は南半球を写したものとなります。表面の1割以上が衝突クレーターに覆われている様子をMarsset氏は「ゴルフボールのようだ」と表現しています。

パラスは1802年の発見から今年で218年を迎えるものの、その表面や形成史には謎が多く残されています。研究チームはパラスの表面が目立つクレーターだらけになった理由を探るために、パラス、準惑星「ケレス」(小惑星帯最大の天体)、小惑星「ベスタ」(パラスに次ぐ大きさを持つ)を対象に、過去40億年間に渡る他の天体との衝突の様子をシミュレートしました。

その結果、パラスは傾きの大きな楕円軌道(軌道傾斜角34.8度、軌道離心率0.23)を描いているために、ケレスやベスタよりも直径の大きなクレーターが形成されやすいことが示されました。軌道が傾いているパラスは小惑星帯の平均的な軌道に対して「水平方向」だけでなく「上下方向」にも大きく移動しながら横切ることになるため、他の天体との相対速度が大きくなりやすく、同じ重さの小天体が衝突するときの運動エネルギーもケレスやベスタより大きくなるのがその理由です。

■17億年前の大規模な衝突がパラス族の小惑星を生み出したか

今回の観測によって、パラスの赤道に沿うように巨大な衝突地形が存在することと、南半球に明るいスポットのような場所がみられることも判明しました。

巨大な衝突地形については、シミュレーションの結果から、およそ17億年前に直径20~40kmの小惑星が衝突した際に形成されたと推測されています。このとき飛び出した破片によって、パラスに似た傾いた軌道を持つ「パラス族」と呼ばれる複数の小惑星が誕生したとみられています。

また、南半球の明るいスポットは、NASAの無人探査機「ドーン」の観測によってケレスの表面に見つかった、炭酸塩鉱物のような物質に由来するのではないかと研究チームは考えています。その理由としてMarsset氏は、「ふたご座流星群」の母天体(流星のもとになる塵を放出した天体)とみられる小惑星「ファエトン」(フェートン)の名を挙げています。

ふたご座流星群として地球の大気圏に突入する塵には、他の流星群よりもナトリウムが豊富に含まれていることが知られています。このことから、ふたご座流星群の母天体であるファエトンはナトリウムを含む炭酸塩鉱物に富んでいるとみられていますが、ファエトンはパラスを母体とするパラス族小惑星のひとつであり、もともとはパラスの一部だったとも考えられています。今回観測された明るいスポットはパラスにおいて炭酸塩鉱物の鉱床が表面に露出している可能性を示すとともに、パラスとファエトンのつながりをも示すものと言えるかもしれません。

ファエトンは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が現在検討を進めている深宇宙探査技術実証機「DESTINY+」によって、接近観測を行うことが計画されている小惑星でもあります。Marsset氏は、パラスにおける塩鉱床の形成を検証するにあたり、DESTINY+によるファエトンの観測に期待を寄せています。

【▲JAXAが検討中の深宇宙探査技術実証機「DESTINY+」の想像図(Credit: JAXA/カシカガク/Go Miyazaki)】

 

Image Credit: ESO/M. Marsset et al./MISTRAL algorithm (ONERA/CNRS)
Source: MIT / Nature Research Astronomy Community / JAXA
文/松村武宏

 オススメ関連記事