惑星よりも大きな質量を持つものの、中心部分で水素の核融合が始まるほどには重くない天体「褐色矮星」。その質量の上限は木星の75倍とされていますが、今回、惑星との境目といえる下限の質量を推定した研究成果が発表されました。

■褐色矮星の下限質量は木星の15倍と推定

赤色矮星(左奥)を周回する褐色矮星(右手前)の想像図(Credit: ESO)

褐色矮星の質量の上限は、中心で核融合が始まるかどうかを左右する質量をもとに、木星の75倍(太陽質量の7パーセント)とされてきました。下限の質量は木星の13倍とされてきたものの、近年発見が相次ぐ木星よりも重い太陽系外惑星との違いは、はっきりしていませんでした。

核融合で輝くほど重くならなかった褐色矮星と、恒星を取り囲む原始惑星系円盤から誕生した惑星のあいだには、どのような違いがあるのか。Brendan Bowler氏(テキサス大学オースティン校)らの研究チームはその違いをはっきりさせるために、2008年に見つかった系外惑星「がか座ベータ星b」(質量は木星の10倍前後)を含む27個の褐色矮星と巨大惑星の観測を行いました。

研究チームがハワイのW.M.ケック天文台にあるケック望遠鏡を使った観測結果などをもとにシミュレーションを行った結果、褐色矮星と巨大惑星を隔てる質量は「木星質量の15倍」であると推定されました。

決め手となったのは軌道のシミュレーション結果で、木星質量の15倍以下では軌道が円形に近いことから、惑星として形成されたことがわかるとされています。いっぽう、木星質量の15倍以上ではより細長い楕円形の軌道を描いているものも多く、これらが低質量の恒星と同様のプロセスで形成された「恒星になりかけた天体」であり、主星とペアを成す連星のように見えるとしています。

■27の褐色矮星と巨大惑星を直接撮影して軌道を分析

今回観測された巨大惑星(Giant planets、青)と褐色矮星(Brown dwarf companions、茶)の軌道離心率との関係を示したグラフ。巨大惑星は円形に近い軌道(軌道離心率0.1~0.2)を描いているが、褐色矮星は円形から長楕円形までさまざまな形状の軌道を描いている(Credit: Brendan Bowler (UT-Austin))

太陽系外惑星のなかには数日で恒星を周回するほど小さな軌道を描くものも数多くありますが、今回の研究対象となった褐色矮星や巨大惑星は主星から遠いところを公転しているため、一周するのに数年から数十年単位の時間がかかります。

Bowler氏が「1枚写真を撮ったら1年待ち、撮ったらまた1年待つ」と言うように、観測するだけでは必要なデータを得るのに長い待ち時間が必要となってしまいます。そこで、今回の研究では27の褐色矮星および巨大惑星をケック望遠鏡で直接撮影するとともに、その軌道をシミュレーションで分析する手法が用いられました。

そのため、シミュレーションで推定された観測対象の軌道には不確実性が含まれており、将来の観測によって結果が変わる可能性もあります。また、Bowler氏は観測対象が27個と現時点ではまだ少ないことにも言及しており、今後はチリのラスカンパナス天文台で建設が進む「巨大マゼラン望遠鏡(GMT)」などを使ったより高精度の観測を検討しています。

今回の研究において、ケック望遠鏡を使って直接撮影された褐色矮星「GJ 504 B」(右上)(Credit: Brendan Bowler (UT-Austin)/W. M. Keck Observatory)

 

Image Credit: Brendan Bowler (UT-Austin)
Source: W.M.ケック天文台
文/松村武宏

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