この四半世紀のあいだに、太陽以外の恒星を周回する太陽系外惑星が数多く見つかってきました。そのなかには大気があれば地表に液体の水が存在し得る「ハビタブルゾーン」を周回する系外惑星も含まれています。生命が誕生できる環境を持つ系外惑星は存在するのか、その探索に「唯一の手本」といえる地球での知識がどのように役立てられようとしているのかを、NASAが解説しています。

■地球の気候モデルをもとに系外惑星の環境をシミュレート

太陽に一番近い約4.22光年先の恒星プロキシマ・ケンタウリには、地球よりやや大きな系外惑星「プロキシマ・ケンタウリb」が見つかっています。太陽の1割ほどの重さしかないプロキシマ・ケンタウリの表面温度は摂氏2800度ほど(太陽は摂氏約6000度)しかありませんが、プロキシマ・ケンタウリbはおよそ11日で一周するほど主星に近く、ハビタブルゾーンのなかにある軌道を周回しています。

ただ、恒星に近すぎる系外惑星は、潮汐力によって自転と公転の周期が同期した「潮汐固定」(潮汐ロックとも)の状態になりやすく、片側がいつも昼、反対側がいつも夜になっていると予想されています。また、プロキシマ・ケンタウリでは強力なフレアが発生することも知られており、プロキシマ・ケンタウリbの環境は強力な紫外線が降り注ぐきびしい環境ではないかとの指摘もあります。

潮汐固定された系外惑星の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)

最近までNASAのゴダード宇宙飛行センターに勤めていたAnthony Del Genio氏は、研究チームとともに「ROCKE-3D」というソフトウェアを使ってプロキシマ・ケンタウリbの気候を研究してきました。ROCKE-3Dは地球の気候モデルをもとに開発されたシミュレーターで、最近では系外惑星の大気を研究する目的でも利用されています。

Del Genio氏は、プロキシマ・ケンタウリbの雲が日傘のようにふるまうことで放射が緩和され、昼側の温度が下がる可能性がシミュレーションによって示されたことに言及。昼側の熱が大気と海の循環によって移動し、永久に照らされない夜側でも液体の水が存在している可能性を指摘しています。Del Genio氏とは別にプロキシマ・ケンタウリb の研究を行ったRavi Kopparapu氏(ゴダード宇宙飛行センター)も、暖められた大気の対流によって円形に広がる分厚い雲が形成され、昼側の空を覆い尽くしている可能性があるとしています。

■酸素を見つければ良いとは限らない?

地球の大気中にあって生命との結びつきが深い元素といえば、酸素が挙げられます。それなら系外惑星の大気でも酸素を探せば生命に辿り着けるのかというと、必ずしもそうとは言えないようです。Giada Arney氏(ゴダード宇宙飛行センター)は、太古の地球ではメタンを生成する微生物(メタン菌)が繁栄していた時期があったことを指摘。その頃の地球は大気中のメタンによって「淡いオレンジ色」に見えたかもしれないと語っています。

広い宇宙で生命を探すにあたり、その存在が唯一知られている地球は重要なヒントをもたらします。しかし、地球の環境は生命の誕生から現在までの間にも変化しているため、今この時代の姿だけを参考にすると、別の環境に暮らす生命を見逃してしまうかもしれません。この点を踏まえてArney氏は、生命の存在を求める上で酸素以外に探すべき兆候についての研究を進めています。

現時点ではプロキシマ・ケンタウリbをはじめとしたハビタブルゾーン内の系外惑星に大気が存在するかどうかはわかりませんが、系外惑星の大気を検出できるとされる「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡など次世代の観測手段の登場に備えて、研究者による可能性の追求が進められています。

 

Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Chris Smith
Source: NASA
文/松村武宏

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