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2006年9月、地球からおよそ2億3800万光年離れた銀河「NGC 1260」において、非常に明るい超新星「SN 2006gy」が観測されました。今回、通常の10倍以上の明るさで輝いたこの超新星が、白色矮星を含む連星で生じる超新星爆発だったとする研究成果が発表されました。

■爆発そのものはよく知られた「Ia型」の超新星だった

X線観測衛星「チャンドラ」がX線で捉えたSN 2006gy(右上)と、超新星爆発が起きた銀河「NGC 1260」の銀河中心核(左下)(Credit: NASA/CXC/UC Berkeley/N.Smith et al.)

近年、超新星の観測例が増えたことで、新しいタイプの超新星が幾つか見つかるようになりました。そのなかのひとつである「超高輝度超新星」は、一般的な超新星爆発の10倍から100倍も明るく輝くという特徴があります。これほど強いエネルギーを放出する理由は明らかになっておらず、その原因として太陽の100倍も重い大質量星が起こすと考えられている「対不安定型超新星」などが提唱されていました。

今回、前田啓一氏(京都大学)、川端弘治氏(広島大学)らの研究チームは、2006年に観測された超高輝度超新星SN 2006gyの原因解明に取り組みました。爆発から1年以上が経ってからの観測データも含めて分析を行った結果、SN 2006gyは単独の大質量星が起こしたものではなく、すでに研究が進んでいる「Ia型超新星」だったことが明らかになったとしています。

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Ia型超新星は白色矮星(主星)と恒星(伴星)の連星において発生する現象で、白色矮星に伴星のガスが流れ込み、一定の質量(※)に達することで超新星爆発に至るとされています。ただし、一般的なIa型超新星では、高輝度超新星ほど明るく輝くことはありません。

※…太陽質量の約1.4倍。発見者にちなんでチャンドラセカール限界質量と呼ばれる。

■白色矮星が伴星と合体する過程で超新星爆発が起こったか

研究チームによるSN 2006gyの想像図。周囲に放出された高密度の物質のなかで、白色矮星と伴星のコアが合体してIa型超新星が起きたとみられる(Credit: Roberto Iaconi & Keiichi Maeda)

 

研究チームは、2006gyでは白色矮星と比較的大きな伴星が周回しながら徐々に接近し、伴星の外層を構成するガスのなかに白色矮星が入り込みながら周回し続けたことで、伴星のガスが周囲へ大量に放出されたと考えています。

その後、接近し続けた白色矮星と伴星のコアが合体したときにIa型の超新星爆発が発生。爆発の衝撃波が周囲に放出されていた大量のガスに衝突した結果、爆発によるエネルギーの大部分が電磁波に変換され、通常よりも明るい超新星として観測されたとみています。

白色矮星は太陽の8倍よりも小さな恒星が進化した姿であるため、連星を組むペアである伴星の質量もそれほど重くはなりません。しかし研究チームは、主星が白色矮星へと進化する過程で放出したガスの一部を取り込むことで、伴星の質量が太陽の10倍以上になることもあり得るとしており、2006gyでは進化の過程でガスの大規模な移動が起きていたことを示唆しています。

研究チームでは、遠い宇宙で発生した場合でも検出しやすい超高輝度超新星を通して過去の宇宙における恒星の進化過程に関する知見が得られること、銀河の距離を測定する際にも重宝されるIa型超新星や、連星の合体についての理解がさらに深まることに期待を寄せています。

 

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Image Credit: NASA/CXC/M.Weiss
Source: 広島大学
文/松村武宏

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