2019年8月に発見され、同年12月に太陽へと再接近した「ボリソフ彗星(2I/Borisov)」は、太陽系の外からやってきた恒星間天体と考えられています。今回、2017年に観測史上初めて見つかった恒星間天体「オウムアムア(’Oumuamua)」やボリソフ彗星が、本当に太陽系外からやってきたのかどうかを検証した研究成果が発表されました。
■やはり太陽系の外から飛来した可能性が高いと結論
オウムアムアやボリソフ彗星は太陽系内の天体よりも速いスピードで移動しており、太陽系にとどまらずに脱出していく軌道(双曲線軌道)を描いています。このことから、2つの天体は太陽系の外から飛来した恒星間天体であると考えられていますが、太陽系を取り囲む「オールトの雲」から飛来した可能性も指摘されていました。
今回、樋口有理可氏(国立天文台)らの研究チームは、こうした天体が「太陽系の外から進入してくる場合」と「オールトの雲からやってくる場合」の2パターンを想定して、軌道のシミュレーションを行いました。その結果、オウムアムアやボリソフ彗星の起源はやはり太陽系の外であり、恒星間天体である可能性が高いことが示されました。
オールトの雲とは、太陽から地球までの距離の1000倍から、最大で10万倍(およそ1.5光年)の範囲にまで小さな天体が分布していると予想される領域です。軌道を一周するのに200年以上かかるような長周期彗星は、オールトの雲にあった天体が何らかの原因で太陽に接近する細長い軌道を描くようになったものと考えられていて、このことからオールトの雲を「彗星のふるさと」と表現することもあります。
今回の研究では、木星の数倍程度の質量を持つ天体(恒星間をさまよう自由浮遊惑星や褐色矮星など)がオールトの雲を通過する場合、その重力の影響を受けて軌道を乱された天体が太陽系を脱出するほどの速度を得るとされており、オールトの雲が起源である可能性もゼロではないことが示されています。
ただ、木星よりも大きな天体であれば、近年実施されている広範囲のサーベイ観測によってすでにキャッチされていてもおかしくありません。研究チームは、そのような天体が実際には見つかっていないことから、オールトの雲が起源である可能性は低いと結論しています。
Image Credit: 国立天文台
Source: 国立天文台
文/松村武宏