天の川銀河の中心に存在が確実視されている超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」の周囲には、幾つもの恒星やガス雲が存在しています。今回、2014年にいて座A*に接近したガス雲の正体が合体した連星であると提唱する研究チームによって、これに似た天体が新たに4つ発見されました。

■ブラックホールに接近しても生き延びた「G2」はガスをまとった恒星か

超大質量ブラックホール「いて座A*」(中央)を周回する「G2」などの天体を描いた想像図。ガスや塵に囲まれるようにして連星が合体してできた恒星が存在すると考えられている(Credit: Jack Ciurlo)

2005年、Andrea Ghez氏(カリフォルニア大学ロサンゼルス校:UCLA)らの研究チームは天の川銀河の中心に変わった性質を持つ天体を発見し、「G1」と名付けました。2012年には、ドイツの研究チームがG1に似た天体「G2」を発見しています。

G1やG2の正体はガス雲ではないかと考えられていました。G2は2014年にいて座A*へと最接近した際に、太陽の400万倍の質量を持つブラックホールの強い重力がもたらす潮汐力によって長く引き伸ばされており、いずれブラックホールに飲み込まれていくだろうとも予想されました。

ところが、G2はブラックホールへの最接近後も存続しており、現在では接近前のようにコンパクトな天体に戻ったことが観測されています。単純なガス雲のようでいて、恒星のような性質も示すG2の正体については、研究者のあいだでも議論が続いています。

今回、Anna Ciurlo氏(UCLA)や前述のGhez氏らの研究チームは、20年に渡り蓄積された観測データを分析することで、G1やG2に似た4つの天体「G3」「G4」「G5」「G6」を発見しました。研究チームは、いて座A*を100年から1000年ほどの周期で公転するこれらの天体がただのガス雲ではなく、その内部に「連星が合体してできた恒星」が隠れているのではないかと考えています。

2014年にいて座A*へと最接近した際、G2のガスは大きく引き伸ばされたことが確認されたものの、G2に含まれる塵はガスほど大きくは引き伸ばされませんでした。「何かがG2をコンパクトなサイズに保っている」(Ciurlo氏)ことこそが、内部に恒星が存在することの証拠であると研究チームは捉えています。

2つの恒星が互いに周回し合う連星は、宇宙においてありふれた天体です。Ghez氏は、超大質量ブラックホールの周囲では強い重力によって連星の合体が促進されるのではないかと考えており、連星が合体する現象は意外とありふれた出来事かもしれないと語っています。

G1からG6までの軌道を示した図。中央の白十字がいて座A*の位置を示す。銀河の中心付近では連星の合併が比較的ひんぱんに起きているのかもしれない(Credit: Anna Ciurlo, Tuan Do/UCLA Galactic Center Group)

 

Image Credit: Jack Ciurlo
Source: UCLA
文/松村武宏

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