太陽系外惑星の性質を解き明かす高解像度の観測装置「アロペケ」

ジェミニ天文台は8月29日、太陽系外惑星の性質を解き明かすのに役立つ新しい観測装置を開発したエイムズ研究センター(NASA)のSteve B. Howell氏らによる研究成果を発表しました。研究内容は論文にまとめられ、8月19日付でThe Astronomical Journalに掲載されています。

Howell氏らが開発した観測装置の名は「’Alopeke(アロペケ)」といい、ハワイの言葉で「キツネ」を意味します。研究チームは今回、ハワイのマウナケア山にあるジェミニ北望遠鏡にアロペケを設置し、地球からおよそ2000光年先にある系外惑星「ケプラー13b」の観測を行いました。

系外惑星「ケプラー13b」(左手前)の想像図

■連星系に存在する系外惑星は観測するのが難しい!

ケプラー13bは、太陽の1.71倍の大きさを持つ恒星「ケプラー13A」約1.76日で公転するホットジュピターです。ケプラー13bの主星であるケプラー13Aは、別の恒星「ケプラー13B」およびその周囲を巡る小さな恒星「ケプラー13C」、合計3つの恒星とともに連星系を構成しています。

このような連星系に存在する系外惑星の観測には、独特の難しさがあります。系外惑星の性質を調べるには、主星の明るさや波長のわずかな変化を検出しなければなりませんが、連星系では近いところに複数の恒星が存在するため、観測データには2つ以上の恒星の光が入り混じってしまいます

そのため、系外惑星がどの恒星を公転しているのかを判断するのが難しかったり、サイズ、質量、大気組成といった特性を求める上での不確実さが残ってしまいやすかったりしたのです。

■短時間露光を繰り返す「スペックル・イメージング」を採用

ジェミニ北望遠鏡に設置されたアロペケでは、短いシャッタースピード(アロペケの場合は60ミリ秒)で撮影を繰り返し、取得した複数の画像を合成することで高い解像度を得る「スペックル・イメージング」という方法が採用されています。

今回の研究では、高解像度の観測を実現したアロペケによってケプラー13Aとケプラー13Bの光を分離し、明るさの変化を別々に分析することが実現しました。観測の結果、ケプラー13Aの明るさは光の波長(色)によって変わり方が異なっており、ケプラー13bの大気は主星の熱によって膨張した状態にあることが示唆されるとしています。

また、今回の観測データは、わずか4時間という短時間で取得されました。「半数が連星系で見つかっている」(Howell氏)という系外惑星の性質を調べる強力なツールとして、アロペケに期待が寄せられています。

 

Image Credit: Gemini Observatory/NSF/AURA/Artwork by Joy Pollard
https://www.gemini.edu/node/21236
文/松村武宏