NASAは7月30日、観測開始から先日1周年を迎えた系外惑星探査衛星「TESS」によって、新たに3つの系外惑星が見つかったことを発表しました。発見に関する研究結果はマサチューセッツ工科大学のMaximilian Günther氏らによってまとめられ、Nature Astronomyにて公開されています。
■新たに発見された3個の系外惑星「TOI 270」
系外惑星が見つかったのは、がか座の方向およそ73光年先にある恒星「TOI 270」です。TOI 270は太陽よりも小さなM型の恒星で、直径と質量はどちらも太陽の4割程度、表面温度は太陽の3分の1くらいの赤く輝く星です。
今回発見された系外惑星を順にチェックしてみましょう。最も内側の「TOI 270 b」は地球よりも25パーセント大きな岩石質の惑星で、公転周期は3.4日。既知の系外惑星から得られた統計により、質量は地球の約1.9倍と推定されています。
「TOI 270 c」のサイズは地球の2.4倍で、公転周期は5.7日。一番外側の「TOI 270 d」は地球の2.1倍で、公転周期は11.4日です。TOI 270 cとTOI 270 dは海王星の半分ほどの大きさで、いわゆる「ミニ・ネプチューン」や「サブ・ネプチューン」に分類される系外惑星です。
■生命体の存在の可能性は…
新しい系外惑星が見つかるとどうしても気になるのが、生命存在の可能性です。推定される表面温度はTOI 270 bが約254度、TOI 270 cが約150度、TOI 270 dが約67度(いずれも摂氏)。内側の2つは暑そうですが、TOI 270 dなら温暖な環境が維持できるかもしれず、注目されています。
ただ、ここで推定された温度は平衡温度(TOI 270から受け取るエネルギーと惑星が放射するエネルギーだけを考慮したもの)なので、二酸化炭素や水蒸気などによる温室効果が考慮されていません。そのため、実際の温度はこれよりも高くなっている可能性があります。
また、3つの系外惑星はどれも自転と公転の周期が同期していて、片側の面だけがずっと昼、もう片側は永遠の夜になっていると見られています。平衡温度は比較的低いTOI 270 dも、地球型の生命にとっては厳しい環境かもしれません。
研究に参加したシカゴ大学のAdina Feinstein氏は、2021年に打ち上げ予定の「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡に期待を寄せています。系外惑星の大気を観測するジェイムズ・ウェッブにとってTOI 270は半年以上に渡り観測できる位置にあることから、Feinstein氏は「TOI 207 cとTOI 270 dの大気の比較研究を可能にする」と語ります。
また、研究チームは、TOI 207に対する追加の観測によって別の系外惑星が見つかることも期待しています。TOI 270 dよりも外側に惑星が存在すれば、その環境は生命の存在により適している可能性があるからです。M型の恒星の周囲では強力なフレアに見舞われる可能性も危惧されますが、TOI 270には「フレアのような激しい活動が見られない」(Günther氏)とされており、安定した環境が存続できるかもしれません。
続々と見つかっている系外惑星。地球型の生命にとって住みよい環境を持つ場所はなかなか見つかりませんが、発見はもう時間の問題なのかもしれません。
Image Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Scott Wiessinger
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2019/nasa-s-tess-mission-scores-hat-trick-with-3-new-worlds
文/松村武宏