アリゾナ州立大学は7月22日、同大学のEvgenya Shkolnik氏が参加した研究チームによる観測によって、「ホットジュピター」と呼ばれるタイプの太陽系外惑星における磁場の強さを測定することに成功したと発表しました。コロラド大学のWilson Cauley氏が率いた研究の内容は論文にまとめられ、同日付でNature Astronomyに掲載されています。
ホットジュピターは木星のようにガスでできた系外惑星ですが、主星(恒星)に非常に近い公転軌道を周回しているため、その大気は高温に加熱されています。また、主星の強力な磁場の中を公転することから、ホットジュピター自身が持つ磁場と主星の磁場が強い相互作用を見せる可能性も考えられてきました。
そこで研究チームは、ホットジュピターを持つ恒星の活動を分析することで、恒星と相互作用しているホットジュピターの磁場を間接的に測定することに挑戦しました。対象となった恒星は「HD 179949」「HD 189733」「うしかい座タウ星」「アンドロメダ座ウプシロン星」の4つです。チームはハワイの「カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡」とフランスの「ベルナール・リヨ望遠鏡」を用いて、これら4つの恒星を観測しました。
研究チームが注目したのは、その光に含まれるカルシウムの痕跡(1階電離カルシウムの吸収線)です。Cauley氏によると、ホットジュピターの公転によって惑星の磁場がねじられたり伸ばされたりすると、恒星から放出されるカルシウムの量が増えます。その様子を観測・分析することで、ホットジュピターの磁場が推定できるのです。
観測によって判明したホットジュピターの磁場は、20~120ガウス。これは、木星の磁場(4.3ガウス)と比べて5~30倍ほど、地球の磁場(0.5ガウス)に対しては40~240倍という強力な磁場が存在することを意味します。
研究チームは、今回判明したホットジュピターの磁場の強さは、従来の定説であるダイナモ理論(惑星内部の流体によって磁場が生み出される作用にもとづく)による予測値より2~3桁も強いことから、「惑星の磁場は惑星内部を移動する熱量にも依存する」という考え方を支持するものだとしています。このことはホットジュピターだけでなく、地球のような岩石質の系外惑星における磁場を理解する上でも役立つだろうとShkolnik氏は語っています。
ハビタブルゾーンの系外惑星が地球型の生命にとって快適な環境を保てるか……その鍵のひとつに磁場の存在が挙げられますが、今回の研究成果は生命の繁栄に適した環境を巡る議論にも影響を与えることになるのかもしれません。
Image Credit: NASA, ESA and A. Schaller (for STScI)
https://asunow.asu.edu/20190722-discoveries-astronomers-calculate-magnetic-activity-hot-jupiters
文/松村武宏