カリフォルニア工科大学は8月27日、変わった軌道を描く太陽系外惑星「HR 5183 b」の発見に至ったSarah Blunt氏らの研究成果を発表しました。

木星に似た系外惑星の想像図(Credit: ESO/L. Benassi)

■まるで彗星のような楕円軌道を描く系外惑星

木星の3倍ほどの重さを持つ「HR 5183 b」が見つかったのは「おとめ座」の方向およそ100光年先にある恒星「HR 5183」です。カリフォルニア州のリック天文台やハワイの「ケック望遠鏡」によって1990年代から蓄積されてきた20年分の観測データをもとに、公転する惑星の重力によって主星(恒星)がふらつくように動く様子を分析する「視線速度法」によって検出されました。

注目はその軌道です。太陽系の惑星や系外惑星の軌道は、真円ではないものの、真円に近い楕円を描くことがほとんどです。ところが、HR 5183 bの公転軌道は、まるで太陽系における短周期彗星ように細長い楕円形をしているのです(軌道離心率は0.84)。

仮にHR 5183 bを太陽系に配置した場合、太陽に一番近いときには小惑星帯の辺りまで来るのに、一番遠ざかるときは海王星よりも遠くまで移動してしまうとみられています。反射率(アルベド)を0.5と仮定した場合の表面温度は、主星に一番近付いたときでおよそ170ケルビン(摂氏マイナス100度ほど)ですが、一番遠ざかるときにはおよそ50ケルビン(摂氏マイナス220度ほど)まで下がると予想されています。

■発見できたのはタイミングが良かったから

公転周期が45年~100年に達するとされるHR 5183 bは、極端な楕円軌道を描いていたために、今このタイミングで発見できました

惑星が公転するのにあわせて、主星は前後左右へと円を描くようにわずかにふらつきます。視線速度法では、恒星がこのようにふらつく動きを分析することで、系外惑星の存在を間接的に検出します。その様子は「系外惑星が1周するごとに主星が前後に1往復する」ように見えるため、系外惑星の公転周期が数日や数か月のように短ければ短期間の観測でも見つけやすく、数十年から数百年と長ければ長期間観測し続けないと見つけにくくなります。

今回の研究に利用されたデータは20年分なので、50年以上の公転周期を持つ系外惑星が見つかることは期待できないはずでした。しかし、リック天文台やケック望遠鏡が観測を実施したこの20年ほどの期間は、HR 5183 bが主星に最接近する時期とうまく重なっていました。

楕円軌道を描く天体は、主星に近づくほど移動速度が速くなります。その結果、研究に参加したAndrew W. Howard氏が「完全な軌道を描いていなくても、そこに惑星があると確信できる」と語るように、主星のふらつきにも目立った変化が生じます。

主星に最接近したときに速度が一番速くなる様子は、HR 5183 bの軌道を再現したこちらの動画でも示されています(動画内で円軌道を公転しているのは、同じスケールで描かれた太陽系の惑星です)。細長い楕円軌道を描いていたことと、タイミングに恵まれたおかげで、HR 5183 bを発見することができたのです。

■惑星形成の理論にも影響する可能性

HR 5183 bがこのような楕円軌道を描くようになったきっかけとして、別の系外惑星との相互作用が挙げられています。HR 5183 bも誕生当初は円軌道を描いていたものの、同時期に誕生した同じくらいの大きさの系外惑星と重力で影響を及ぼし合い、相手を恒星系の外に弾き飛ばしてしまった代わりに、自身は楕円軌道を描くようになったというのです。

誕生したばかりの若い惑星が別の惑星と相互作用したり、別の軌道へ移動したりするという出来事は、初期の太陽系でも起こっていたと考えられています。今回見つかったHR 5183 bのような系外惑星がより多く見つかれば、惑星の形成における巨大惑星の役割が明らかになるだろうと研究チームは期待しています。

 

Image Credit: W. M. Keck Observatory/Adam Makarenko
https://www.caltech.edu/about/news/newly-discovered-giant-planet-slingshots-around-its-star
文/松村武宏

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