宇宙という闇夜を渡る鳥の群れ。カモに例えられた散開星団

遠くの宇宙の星を散りばめた様な写真は、見分けがつかないほど沢山あります。しかし、この散開星団「M11」は、カモの群れが「V字隊列」で飛行している様子に似ているとされ、英名で「Wild Duck Cluster」としても知られています。周囲には暗黒星雲も存在しており、まるで深夜の空を編隊する渡り鳥のようですね。

この画像は、2019年3月25日に公開されたもので、たて座の方向約6000光年先に位置している「M11」の星のコントラストを鮮明に映し出しています。撮影には、ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ3「WFC3」の赤外線と可視光波長が用いられました。

散開星団の中でも、狭い領域に沢山の星が密集している「M11」ですが、青色に力強く輝く星々が目立ちます。古く赤い星で構成されている球状星団に対し、散開星団は熱く青い星を多く含んでいます。また、散開星団である期間は比較的短く、それぞれの星は近くにある他の強い重力を持つ天体に引き寄せられ、その形を徐々に失っていきます。

「M11」の最も明るく熱い主系列星を研究すると、この散開星団は約2億2000万年前に形成されたものであり、今後は数百万年の時を経て星団は完全に分散すると考えられています。

Image Credit:ESA/Hubble & NASA, P. Dobbie et al.
https://www.spacetelescope.org/images/potw1912a/