まがまがしい…。ヨーロッパ南天天文台がシャープに捉えた「宇宙コウモリ」の姿
Hidden in one of the darkest corners of the Orion constellation, this Cosmic Bat is spreading its hazy wings through interstellar space two thousand light-years away. It is illuminated by the young stars nestled in its core — despite being shrouded by opaque clouds of dust, their bright rays still illuminate the nebula. Too dim to be discerned by the naked eye, NGC 1788 reveals its soft colours to ESO's Very Large Telescope in this image — the most detailed to date.

この画像は、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡「Very Large Telescope(VLT)」によって撮影された反射星雲「NGC 1788」の姿。NGC 1788は有名なオリオン座の三ツ星に近い方角にあり、神話上のオリオンの姿を借りて表現すれば、左足の脛のあたりに位置します。

画像中央に並んでいるオレンジ色の2つの星を中心に、塵の雲がその周囲へと複雑に広がっているように見えます。雲が星の光に明るく照らし出されたり、逆に光をさえぎったりして描き出されたその姿は、ESOが「Cosmic Bat(宇宙のコウモリ)」と表現しているように、まるでギラギラと輝く目をこちらに向けながら、翼を広げて飛び上がった生き物のようでもあります。

超大型望遠鏡VLTは、口径8.2mの望遠鏡4つを中心に構成されています。地球から2,000光年ほど離れたところにあるNGC 1788は、もともと肉眼では識別できないほど暗い天体ですが、今回はVLTを構成する望遠鏡の1つ「Antu」に設置されている光学観測機器「FORS2」の20周年を記念して、これまでで最も鮮明なNGC 1788の姿が撮影されました。

「FORS2」は空の広い範囲を精密に撮影できるだけでなく、天体のスペクトルや偏光を観測する機能も備えており、その幅広い用途から付いたニックネームは「観測機器のスイスアーミーナイフ」。2016年7月には、現在JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」が滞在している「リュウグウ」の観測も実施しました。

まがまがしくも目が離せない宇宙コウモリの姿。ESOでは「Cosmic Gems(宇宙の宝石)」プログラムと題して、科学観測の合間にこうした魅力的な天体の写真を撮影・公開しています。

Image credit: ESO
https://www.eso.org/public/news/eso1904/
文/松村武宏