こちらの画像は、欧州宇宙機関(ESA)とロシアのロスコスモスが共同開発した火星探査機「エクソマーズ」の周回衛星「トレース・ガス・オービター(TGO)」が、光学観測機器「CaSSIS」を用いて火星のサバエア大陸と呼ばれる地域を撮影したものです。
なにやらカーボン紙で複写した痕跡のような青い大量の筋が示しているのは、火星で発生する「塵旋風」が地表面を削り取り、少し深い部分の土が露出しているとみられる箇所です。
本当にこうした青い色をしているのではなく、実際には濃い赤色に見える部分が青く着色されています。塵旋風が尾根に沿って集中発生している様子がよくわかりますね。尾根沿いに集まる理由ははっきりしていないものの、地形に沿って上昇する二酸化炭素などによる気流が関係していると考えられています。
また、下の画像は同じく「トレース・ガス・オービター(TGO)」が撮影したエリシウム平原の一角。水色の矢印で示された先にある小さな白い点は、火星の地震動や地下の温度を探るべく活動を続けているNASAの火星探査機「インサイト」です。
「インサイト」の周辺に見える黒いシミのような部分は、着陸時の逆噴射を浴びた痕跡です。少し離れたところには、火星の大気圏突入時に探査機本体を熱から防護した耐熱シールドなども写っています。「CaSSIS」の解像度は1ピクセルの1辺あたり4.5m。「インサイト」の寸法は最大6m(太陽電池展開時)なので、「トレース・ガス・オービター(TGO)」からでもギリギリ見えるサイズです。
先日もNASAの月周回衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」が月の裏側に着陸した中国の月面探査機「嫦娥(じょうが)4号」を軌道上から捉えた写真が公開されていたように、最近は地表の探査機を軌道上から撮影するといったシチュエーションが増えてきました。
遠くない将来、月や火星で探査活動を実施する宇宙飛行士たちも、火星の有人探査を題材にした映画「オデッセイ」さながらに、こうして軌道上から見守られることになるのでしょうね。
Image credit: ESA/Roscosmos/CaSSIS
http://www.esa.int/Our_Activities/Human_and_Robotic_Exploration/Exploration/ExoMars/InSight_lander_among_latest_ExoMars_image_bounty
文/松村武宏
Last Updated on 2022/10/13