海王星とその衛星たちの一部を捉えたこの画像は、2009年にハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ3「WFC3」によって撮影された画像を合成したものです。

【▲ 中央が海王星。右上の白丸で囲った天体が14番目の衛星「ヒッポカンプ(Hippocamp)」(Credit: ESA/Hubble, NASA, L. Calçada, A. Feild, M. Showalter et al.)】

右上の丸で囲まれている天体は、2019年2月に新たに「ヒッポカンプ(Hippocamp)」と命名された海王星の14番目の衛星です。これまでは発見時に与えられた「S/2004 N 1」という仮符号で呼ばれていましたが、国際天文学連合(IAU)が定めた規則に従い、ギリシャ神話に登場する空想の半馬半魚の生き物「ヒッポカムポス」(Wikipedia)にちなんだ名称となっています。

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ヒッポカンプ」のサイズは小さく、わずか34キロメートルと推定されています。すでに星間空間へと到達した「ボイジャー2号」が1989年8月に海王星へ接近した際には発見できませんでしたが、それから24年後の2013年7月、ハッブル宇宙望遠鏡が2004年から2009年にかけて撮影した150枚を超える画像を調べていたSETI協会のMark Showalterによって発見されました。よって仮符号には「2004」の年号が含まれています。
以下の画像は、海王星を周回するヒッポカンプの想像図です。

発見された当時から、ヒッポカンプには一つの謎がありました。その軌道が、すぐ外側を周回する別の衛星「プロテウス」の軌道に驚くほど近いのです。プロテウスはヒッポカンプよりも大きく重いため、本来ならプロテウスの引力によって軌道の外へ弾き飛ばされてしまうか、プロテウスに衝突してしまうはず。そこにあるはずのない衛星だったのです。

今回、発見者のShowalterが率いる研究チームによって、ヒッポカンプの謎めいた起源が明らかになりました。ボイジャー2号が撮影した画像から、プロテウスには大きなクレーターが存在するとすでに知られていました。このクレーターを形作った数十億年前の彗星による衝突の際に飛び出した破片こそ、ヒッポカンプだったのです。

「1989年にはクレーターを見つけただけだったが、ハッブル(の観測結果)とあわせて、今日ヒッポカンプとして目にしているものがプロテウスから取り残された破片なのだとわかった」とShowalterは語り、共同研究者であるNASAエイムズ研究センターのJack Lissauerは、「衛星は時として彗星によってバラバラに壊されることを示す、ドラマチックな一例だ」とコメントしています。

 

Source

  • Image credit: ESA/Hubble, NASA, L. Calçada, A. Feild, M. Showalter et al.
  • hubble - Hubble helps uncover origin of Neptune’s smallest moon Hippocamp

文/松村武宏

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