「ハッブル」宇宙望遠鏡の広視野カメラ3(WFC3)によって撮影された「バタフライ星雲」(Credit: NASA, ESA and the Hubble SM4 ERO Team)

赤と白で彩られた羽をもつ蝶のようにも見えるこの天体は、さそり座の方向およそ4000光年先にある惑星状星雲「NGC 6302」。別名「バタフライ星雲」とも呼ばれています。超新星爆発を起こすには質量が足りない恒星によって形成される惑星状星雲は、数十億年後の太陽系の姿を予想させる天体でもあります。

羽のように見える構造は、中心にある星が赤色巨星になったあと、星の外層を構成していたガスを放出したことによって形成されました。ガスの放出は短期間で急速に起きたと考えられており、現在観測されているバタフライ星雲はガスの放出が始まってから2250年ほど経った姿だとみられています。

中心の恒星は、ガスを失って白色矮星へと移り変わるにつれて表面温度が高くなり、恒星風の速度もより高速になります。そのため、先に放出されたガスに後から放出された高速のガスが衝突することで、羽の形や模様はより複雑なものへと変化していきます。

星雲の色は元素の分布に応じて擬似的に着色されたもので、たとえばは低温のガスに含まれる窒素の存在を示しています。硫黄の存在を示すとともに、高速のガスが過去に放出された低速のガスに衝突した衝撃波面を描き出しています。

バタフライ星雲の中心には、太陽の6割ほどの重さを持つ星の存在が確認されています。この星はもともと太陽の約5倍の質量を持った恒星でしたが、やがて太陽の1000倍ほどのサイズまで膨れ上がった赤色巨星になり、ガスを放出してバタフライ星雲を形成したと考えられています。この中心星は白色矮星へと進化する最終段階にあるとみられており、推定される表面温度は摂氏およそ22万度と高温ですが、毎年1%の割合で暗くなっている可能性が2009年に発表された研究によって示されています。

バタフライ星雲は、イギリスのアマチュア天文家サー・パトリック・ムーア氏によって1980年代にまとめられたアマチュア天文家向けの天体カタログ「Caldwell Catalog(カルドウェルカタログ、またはコールドウェルカタログ)」に「Caldwell 69」として登録されています。画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の広視野カメラ3(WFC3)によって撮影されました。

 

Image Credit: NASA/ESA
Source: NASA
文/松村武宏

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