観測史上最も古い「静かな銀河」を120億光年の遠方宇宙で発見

近年、観測技術の向上によって、およそ138億年前の宇宙誕生から間もない時代の様子が少しずつ判明しています。今回、ハワイに建設された天体望遠鏡を使った観測によって、120億年前の時点ですでに星形成が終わりつつある巨大な銀河が見つかりました。

■宇宙誕生から20億年ほどの間に急成長した巨大な銀河

白い点線で囲まれているのが、今回観測された約120億光年先の銀河。星形成を終えて静かになりつつあるとみられている(Credit: 国立天文台)

田中賢幸氏(国立天文台/総合研究大学院大学)らの研究チームは、国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」によって発見された遠方宇宙の銀河のひとつを、すばる望遠鏡と同じマウナケア山に建設されたW.M.ケック天文台の「ケック望遠鏡」を使って詳細に観測しました。

初期宇宙に観測される銀河の多くでは豊富なガスから急速に星が形成される「スターバースト」が起きていますが、およそ120億光年先にあるこの巨大な銀河では、活発な星形成活動がすでに終わりを迎えている様子が観測されました。スターバーストが終わりつつある静かな銀河としては、これまでで最も遠くに観測された銀河となります。

また、観測データを分析したところ、この銀河の中心核の重さは、現在の宇宙にある巨大な銀河とほぼ変わらない質量にまで成長していることもわかりました。宇宙が誕生してから20億年ほどの間にこの銀河は急速に星を形成して成熟し、早々と活動を終えようとしていたのです。

■銀河の急成長を示唆する発見が相次ぐ

広大な高密度の水素ガス(青)に囲まれているクエーサー(中心)の想像図(Credit: ESO/M. Kornmesser)

このところ、初期宇宙の銀河が急速に成長していた可能性を示す発見が相次いでいます。たとえばヨーロッパ南天天文台(ESO)の「超大型望遠鏡(VLT)」による観測では、125億光年以上先にある複数のクエーサーが、太陽数十億個分の質量を持った高密度な水素ガスに取り囲まれていたことが明らかになりました。水素ガスの量は、銀河の急速な星形成と巨大ブラックホールの急成長を同時に支えられるだけの質量を持つとみられています。

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また、私たちが住む天の川銀河の中心にある星々を観測した結果からは、中心付近にある恒星の8割以上が80億年以上前のスターバーストによって形成されていたことが判明しました。この発見は、時間をかけて現在の姿に成長したと考えられてきた天の川銀河が、実際にはより急速に成長していた可能性を示唆しています。

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今回の研究を率いた田中氏は、国立天文台のプレスリリースにおいて「どのように巨大な銀河が生まれ、育ち、そして死んでしまうのか。銀河の核ができたのはいつだったのか。これらの謎を解くために、さらに遠い、昔の宇宙を探査します」と語っています。

 

Image Credit: 国立天文台
Source: 国立天文台
文/松村武宏