銀河中心の狭い範囲が銀河全体よりも明るく輝いている「クエーサー」。クエーサーの中心には超大質量ブラックホールが存在すると考えられていますが、初期宇宙のブラックホールがいかにして急速な成長を遂げたのか、そのメカニズムの解明につながりそうな研究成果が発表されました。

■太陽数十億個分の水素ガスが銀河を取り囲んでいた

広大な高密度水素ガス(青)に囲まれているクエーサー(中心)の想像図(Credit: ESO/M. Kornmesser)

およそ138億年前に始まったとされる宇宙の歴史。その最初の数億年が経過した時点で、クエーサーの中心にはすでに太陽10億個分以上という途方もない質量を持つ超大質量ブラックホールが存在していたとみられています。ただ、どうしてこれほどの「短期間」でブラックホールが急速に成長できたのか、そのメカニズムは明らかになっていません。

今回、Emanuele Paolo Farina氏(マックス・プランク天文学研究所)らの研究チームはこの謎に迫るべく、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の「超大型望遠鏡(VLT)」を使って125億年以上前のクエーサー31個を観測しました。その結果、12個のクエーサーが広大かつ高密度な水素ガスの集まりに取り囲まれていたことが明らかになりました。水素ガスはクエーサーの中心にあるはずの超大質量ブラックホールから10万光年の範囲にまで広がっており、ガスの質量は太陽数十億個分に達するとみられます。

クエーサーがある初期宇宙の銀河では天の川銀河の100倍というハイペースで星が生み出される「スターバースト」が起きていたと考えられていますが、今回発見された水素ガスの量は、当時の銀河による活発な星形成活動と中心にあるブラックホールの急成長その双方を維持するに足る量とされています。また、今回の観測は、過去の研究における「若いクエーサーを宿す銀河はガスの供給源となる広大な水素ガスに囲まれている」という予想を裏付ける結果にもなりました。

高密度水素ガスの発見についてFarina氏は、宇宙に最初の恒星が誕生してから数億年で超大質量ブラックホールが誕生するに至ったメカニズム、その解明に向けた重要な一歩になるだろうとコメントを寄せています。

「アルマ望遠鏡」による合体銀河の観測データ(オレンジ)と、今回VLTによって得られた高密度水素ガスの観測データ(青)を重ねた画像(Credit: ESO/Farina et al.; ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Decarli et al.)

 

Image Credit: ESO/Farina et al.
Source: ESO / MPIA
文/松村武宏

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