薄いながらも大気を持ち、時には砂嵐が巻き起こる火星。その全土を覆うほどの規模で発生した大規模な砂嵐の観測データから、空高く立ち昇る砂塵によって火星の水が失われた可能性が示されました。

■高度80kmまで立ち昇る砂塵の塊

2018年5月(左)と7月(右)に撮影された火星の様子。7月の火星は地表の大部分が砂嵐に覆われている(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)

昨年2018年に発生した大規模な砂嵐は火星全土を覆ってしまい、宇宙からは火星の地表がほとんど見えなくなってしまうほどの規模にまで発達しました。この嵐によりNASAの火星探査車「オポチュニティ」が電力を失って通信が途絶し、そのまま運用を終了しています。

Nicholas Heavens氏(ハンプトン大学)らの研究チームは、昨年の砂嵐を軌道上から観測していたNASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」のデータを使い、「dust tower(ダストタワー)」と呼ばれる砂塵の巨大な塊について分析を行いました。

ダストタワーは火星における大気現象のひとつで、大気中に舞い上がった塵が巨大な塊を成し、上昇気流とともに空高くまで立ち昇ります。分析の結果、大気中の水蒸気がダストタワーによって大気の上層まで運び上げられ、そこで太陽光によって分解されるというプロセスが何億年にも渡って繰り返されたことで、火星の地表から多くの水が失われた可能性が示されたのです。

■大規模な砂嵐ではダストタワーが発生しやすい

MROが2010年11月に撮影したダストタワー(中央下にある黄白色をした雲のような部分)(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)

ダストタワーそのものは普段の火星でもみられる現象ですが、大規模な砂嵐のもとでは特に発生しやすいとされています。昨年の砂嵐では高度80kmまで砂塵の塊が上昇し、アメリカ合衆国本土がおさまってしまうほどの範囲を覆う広大な塵の層を大気中に形成しました。

研究チームが観測データを分析したところ、昨年の大規模な砂嵐においては、数週間に渡り複数のダストタワーが発生していたことが確認されました。普段発生するダストタワーは1日程度で沈静化するため、数週間のあいだに続々とダストタワーが生じるのは異例の状況です。

ダストタワーは塵だけでなく、水蒸気なども空高くまで運び上げます。継続的に発生する強力なダストタワーが水蒸気を次々に持ち上げるエレベーターとして働き、上層大気において太陽光に含まれる紫外線が水を分解するプロセスを促進することになったのではないかとみられています。

研究チームは、今後の観測で得られるデータも使い、火星の大気中から水が失われるプロセスにおいてダストタワーが果たす役割を解明したいとしています。

 

あわせて読みたい
古代火星の水質、生命の誕生や生存に適していたことが判明
火星探査車キュリオシティは、かつてオアシスのように水をたたえていた場所にいた

Image: NASA/JPL-Caltech/MSSS
https://www.nasa.gov/feature/jpl/global-storms-on-mars-launch-dust-towers-into-the-sky
文/松村武宏