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天の川銀河をはじめとした銀河の中心には、途方もない質量を持った「超大質量ブラックホール」が存在するとされています。その周囲にも惑星サイズの天体が形成される可能性があることを理論的に示した研究成果が発表されました。

■降着円盤の外側にある塵の集まりで惑星が形成される可能性

超大質量ブラックホールの周囲で形成された惑星サイズの天体の想像図(Credit: 鹿児島大学)

「惑星」といえば、地球木星のように太陽の周りを公転する8つ(以前は冥王星も含めた9つ)の天体や、太陽とは別の恒星を周回する天体「太陽系外惑星」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。今回の研究成果によれば、こうした岩石、水、ガスなどから構成される小さな天体が、超大質量ブラックホールの周囲にも数多く存在しているかもしれません。

和田桂一氏(鹿児島大学)、塚本裕介氏(同)、小久保英一郎氏(国立天文台)の研究チームは、ブラックホールをドーナツ状に取り囲む塵の集まりである「ダストトーラス」という構造のなかで、惑星のような天体が形成される可能性を検討しました。

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その結果、ブラックホールから10光年ほど離れたダストトーラスの内部において、岩石と氷を主成分とした、地球の10倍ほどの重さ(海王星の重さの半分強)を持つ天体が大量に形成され得ることが判明しました。

研究チームによると、ブラックホールの重さを太陽の1000万倍、塵の量を太陽10万個分と仮定して試算したところ、数億年ほどの間に形成され得る天体の数は1万個程度に達したといいます。

超大質量ブラックホールのすぐ近くには引き寄せられたガスによって形成された降着円盤が存在しており、温度が高いために氷は存在できません。しかし、降着円盤の周囲にあるダストトーラスの内部では温度が低く、誕生したばかりの恒星の周囲にみられる原始惑星系円盤のように、氷をまとった塵が分布するとみられています。この塵が集まることで、地球10個分の重さを持つ天体が多数形成される可能性が示されたのです。

研究に携わった和田氏は銀河や超大質量ブラックホールに詳しく、塚本氏と小久保氏は原始惑星系円盤に詳しい研究者です。発表によると、今回の研究のきっかけは、この三名による専門分野を超えた議論のなかに見いだされたといいます。

■遠すぎて今はまだ検出できず、今後の進展に期待大

超大質量ブラックホールと、その周囲を取り囲むガスと塵の円盤の想像図(Credit: 鹿児島大学)

地球に最も近い超大質量ブラックホールは天の川銀河の中心に存在が確実視されている「いて座A*(エースター)」で、地球からの距離は2万6000光年ほど離れています。いて座A*の周囲には濃いガスや塵の集まりは確認されていませんが、過去に条件が整った時期があれば惑星サイズの天体が形成され、今も存在しているかもしれません。

ただし、今回の研究が示したような天体が仮に実在するとしても、現在の観測技術では、いて座A*の周囲にある惑星サイズの天体を検出することはほぼ不可能です。

研究チームは、「超大質量ブラックホールを周回する惑星サイズの天体」が存在する可能性が今回の研究によって理論的に示されたことで、ブラックホールの周囲における天体形成の研究が進み、新たな観測手段が編み出されることに期待を寄せています。

 

関連:合体銀河の中心に3個目の超大質量ブラックホールを発見

Image Credit: 鹿児島大学
https://www.kagoshima-u.ac.jp/topics/2019/11/post-1639.html
文/松村武宏

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