今年の1月、地球からおよそ45億光年離れた銀河で発生した「ガンマ線バースト」が観測されました。今回、この現象に関する複数の研究成果が一斉に公開されています。

■ガンマ線バーストとしては観測史上最大のエネルギー

大質量星の崩壊にともなってガンマ線バースト「GRB 190114C」が発生した様子の想像図(Credit: 東京大学宇宙線研究所/若林菜穂)

ガンマ線バーストとは、ほんの数秒間に太陽一生分のエネルギーが放出されるほどの、非常に激しい爆発とされています。観測できる時間が限られているため、未解明の部分が多い現象です。

東京大学、NASA、ESAなどの発表によると、2019年1月15日朝(日本時間)、ガンマ線バーストの観測を行っている「スウィフト」「フェルミ」といった宇宙望遠鏡が、南天の「ろ座」の方向に強いX線を検出。そのおよそ1分後には大気チェレンコフ望遠鏡「MAGIC」によるガンマ線の観測が始まりました。

この「GRB 190114C」と呼ばれるガンマ線バーストの観測データを分析したところ、300GeV(ギガ電子ボルト)以上という高エネルギーのガンマ線が多数捉えられており、その一部は1TeV(テラ電子ボルト)に達していたことが明らかになりました。

これまでガンマ線バーストを由来とする高エネルギーガンマ線の観測記録は、2013年4月にフェルミ宇宙望遠鏡がキャッチした「GRB 130427A」の95GeVが最大でした。GRB 190114Cでは、この10倍以上の高エネルギーガンマ線が観測されたことになります。

また、エネルギーが300GeV以上のガンマ線に限っては、非常に高いエネルギーのガンマ線を放出していることで知られるおうし座の「かに星雲」より100倍近く明るく輝いていたことも判明しました。

■ガンマ線バーストが生じる仕組みの解明につながるか

「ハッブル」宇宙望遠鏡によって撮影された、GRB 190114Cが生じた銀河の姿(右下)(Credit: NASA, ESA, A. de Ugarte Postigo and A. J. Levan)

およそ45億光年離れた銀河の中心付近で起きた今回のガンマ線バーストは、太陽の100倍ほどの重さを持つ大質量星が崩壊してブラックホールになったとき、星の両極方向に放出されたプラズマジェットによって生じたものとみられています。

従来のガンマ線バーストに関する研究では、磁場のなかで螺旋を描きながら運動する光子が電磁波を放つ「シンクロトロン放射」によってガンマ線が生じると考えられており、これまでの最高記録だった95GeVというエネルギーも、シンクロトロン放射によって説明できるとされてきました。

ところが、今回観測された1TeVというエネルギーは、シンクロトロン放射で生じたとは考えにくい高エネルギーでした。観測データをもとに研究を行った各チームでは、高速で運動する電子が光子にエネルギーを与える「逆コンプトン散乱」など、シンクロトロン放射とは別の仕組みによって高エネルギーガンマ線が生じたものと考えています。

また、今回観測されたガンマ線バーストは天体が密集する銀河の中心領域で発生したことが「ハッブル」宇宙望遠鏡の観測によって判明しており、周囲の環境が高エネルギーガンマ線の発生に寄与した可能性も指摘されています。およそ40分という異例の長時間に渡り観測されたGRB 190114Cは、ガンマ線バーストの謎を解き明かすきっかけになるかもしれません。

 

Image Credit: 東京大学宇宙線研究所/若林菜穂
http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/beta/191121.html
https://www.spacetelescope.org/news/heic1921/
文/松村武宏