■ブラックホールにペアを奪われた連星の成れの果て?

地球からS5-HVS1までの距離は宇宙のスケールからすれば比較的近かったため、研究チームはこの恒星がどこから移動してきたのかを追跡することができました。分析の結果、S5-HVS1は480万年ほど前に、天の川銀河の中心から秒速およそ1800kmで放り出されたことがわかりました。

太陽2.35個分の重さを持つ恒星を、どうすればこれだけ速く放出することができるのか。研究チームはその「犯人」を、天の川銀河の中心に存在が確実視されている超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」だとみています。

研究チームが描くシナリオはこうです。まず、S5-HVS1は別の恒星とペアを組む連星として、銀河中心で誕生しました。ところが、連星が誕生した場所は、太陽の400万倍も重いとされるいて座A*に近いところでした。やがて連星はいて座A*に危険なほど接近し、片方の恒星がブラックホールに捕らえられてしまういっぽうで、S5-HVS1は大きな運動エネルギーを与えられて、銀河中心から弾き飛ばされたというのです。

こうした「連星の片方がブラックホールにつかまり、もう片方が高速で弾き飛ばされる」という現象が起こる可能性は、天文学者のJack Hills(ジャック・ヒルズ)氏によって過去に提唱されていました。研究に参加したTing Li氏は、今回研究されたS5-HVS1こそ、ヒルズ氏が提唱したメカニズムを証明する「最初の明確な事例」だとしています。

 

関連:銀河を高速で駆け抜ける”超高速度星”は未発見の天体が弾き出した?

Image: James Josephides (Swinburne Astronomy Productions)
Source: carnegiescience
文/松村武宏

 オススメ関連記事