NASAの火星探査車「キュリオシティ」の観測データから、またも興味深い事実が明らかになりました。火星大気中の酸素の割合は季節ごとに増減しているとみられていましたが、その変化が予測を上回っていたことが明らかになったのです。

■毎年繰り返される酸素の大幅な増減

火星探査車「キュリオシティ」2016年10月撮影のセルフィー(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)

キュリオシティこと「マーズ・サイエンス・ラボラトリー(MSL)」は、2012年8月に火星の赤道に近い直径およそ150kmのゲール・クレーター(Gale crater)に降り立って以来、地球の暦では7年以上、火星の暦では3年以上の歳月を過ごしています。

火星では、冬期に極地で二酸化炭素が凍結し、夏期には昇華して大気に戻るという循環が起きています。火星大気の平均95%を占める二酸化炭素が増減することになるため、それ以外の成分も季節ごとに割合が変化します。

火星大気の成分比が変化する様子は、キュリオシティの分析装置によってすでに3年分(火星での)の観測データが蓄積されているのですが、今回明らかになった大気成分の観測結果は、研究者を驚かせました。窒素(火星大気の平均2.6%)やアルゴン(同1.9%)の割合は事前の予想通りに変化していたものの、酸素(同0.16%)の変化が予測を上回っていたのです(※)。

火星に春が訪れると、酸素の割合は夏に向けて最大で3割増加。夏が終わる頃には今度は急減して、秋には予想通りの値に落ち着くというパターンが毎年繰り返されていました。また、冬には予想を下回る割合まで減少する様子も観測されています。

二酸化炭素の増減から予想される変化を上回るということは、何らかの理由で火星大気中の酸素量が増減していることを意味します。この観測結果を目にしたときのことを、研究に参加したSushil Atreya氏「気が遠くなる思いだった」と語っています。

※…各成分比はキュリオシティによるゲール・クレーターにおける測定値

■研究者は「非生物的な仕組み」とみるも原因は不明

火星大気中の酸素の比率にみられる季節ごとの変化を示した図。点線は予測された値。春(緑)から夏(赤)にかけて予測より高く、冬(水色)は低い時期がある(Credit: Melissa Trainer/Dan Gallagher/NASA Goddard)

すでにキュリオシティの観測結果から、火星の夏にはメタンの量が6割増えることが判明しています。地球を参考にすれば、メタンは生命活動によっても生成されることがありますし、酸素については言うまでもありません。

ただし、メタンや酸素は生物とは無関係に増減することもあります。キュリオシティが取得したデータからは生物的か非生物的かを区別することはできませんが、研究チームは「今回判明した予想以上の季節変動は非生物的な仕組みが原因である」と捉えて、その理由を解明しようとしています。

しかし、有力な手がかりは今のところ見つかっていません。たとえば、酸素が増える原因として「大気中の水分子が分解されたから」と仮定すると、現在確認されている5倍以上の水が必要になってしまいます。おまけに大気中に追加される酸素の量は年ごとに異なるため、この違いも説明できなければなりません。

「原因の説明に苦労している」と語るMelissa Trainer氏(今回の研究を主導)は、チーム以外の研究者にも広く協力を求めています。

 

Image: Melissa Trainer/Dan Gallagher/NASA Goddard
Source: NASA
文/松村武宏