天の川銀河をはじめ、銀河の中心には超大質量ブラックホールが存在するとみられていますが、矮小銀河と呼ばれる小さな銀河については研究の途上にあります。今回、矮小銀河の中心から外れたところに巨大なブラックホールが見つかったとする研究成果が紹介されています。
■銀河の縁に近いところで電波を発している場合も
モンタナ州立大学のAmy Reines氏らは、全天の4分の1をカバーするサーベイ観測プロジェクト「スローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)」の観測データからピックアップした約4万3700個の矮小銀河を対象に、アメリカの「カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)」による高解像度の電波観測を実施しました。
VLAの観測データを精査したところ、最終的に13個の矮小銀河において「活動銀河核」と思われる電波源が確認されました。強い電磁波を放つ銀河核である活動銀河核の活動はブラックホールが支えていると考えられていることから、これらの矮小銀河には巨大なブラックホールが存在するとみられています。
ところが、ブラックホールが存在するとみられる電波源の位置を矮小銀河の画像に重ねてみると、その幾つかが矮小銀河の中心から離れたところに存在していることがわかりました。なかには矮小銀河の縁ぎりぎりのところに確認されたケースもあります。
■別の銀河との相互作用によってブラックホールがさまよい出した?
人類が初めて撮影に成功した楕円銀河「M87」の超大質量ブラックホールや、天の川銀河の超大質量ブラックホールとみられる天体「いて座A*(エースター)」は、各銀河の中心に存在しています。矮小銀河でも太陽の100万倍ほどの重さを持つ超大質量ブラックホールが中心に見つかっているものもありますが、すべての矮小銀河にあてはまるわけではないようです。
研究チームによると、今回の研究成果は「矮小銀河の巨大ブラックホールは銀河の中心に常在する必要はない」とする過去の研究を裏付けるものとなります。こうした中心から離れたところにある巨大なブラックホールは、矮小銀河が別の銀河と衝突や合体といった相互作用を起こした結果、本来の場所からさまよい出したのではないかとみられています。
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Image: A. Reines et al.
Source: aasnova
文/松村武宏