NASAのX線観測衛星「チャンドラ」が撮影したX線画像と、宇宙望遠鏡の代名詞ともいえる「ハッブル」宇宙望遠鏡が撮影した可視光線画像。この2つのデータを組み合わせた6つの天体の画像がNASAから公開されました。Judy Schmidt氏によって作成された一連の画像は「X線ファイル(the “X-ray Files”)」という、どこか聞き覚えのある呼び名とともに紹介されています。

6つの天体はいずれも地球からおよそ17万光年離れた大マゼラン雲に存在しています。なお、チャンドラのX線画像はいずれも擬似的に着色されたもので、実際にこのような色で見えるわけではありません。

■超新星残骸「N103B」

超新星残骸「N103B」

N103Bは、連星で生じるIa型超新星の超新星残骸です。ペアを組んでいた恒星からガスを奪って超新星爆発を引き起こした白色矮星は、この爆発で吹き飛んでしまったと考えられています。

左上にある青、緑、ピンクの色が集まったいびつな塊は、爆発によって数百万度にまで加熱されたガスが発するX線をチャンドラが捉えたもの。高温のガスを縁取っているように見える何本もの赤いフィラメントは、ハッブルによって撮影された超新星爆発の衝撃波面です。

■星雲「LHA 120-N 44」

星雲「LHA 120-N 44」

LHA 120-N 44は、散開星団「NGC 1929」を取り囲むように広がる星雲です。星団の若い星々によってガスや塵が周囲に吹き飛ばされ、中央にスーパーバブルと呼ばれる大きな泡状の空洞が生じています。

ハッブルの画像では星団の星々やその周辺に広がるガス・塵を見ることができますが、チャンドラの画像からは加熱されたガスから届くX線(青と紫)を通してスーパーバブル全体の様子が見えてきます。

■超新星残骸「LMC N63A」

超新星残骸「LMC N63A」

LMC N63Aは巨大な恒星によって引き起こされた超新星爆発の残骸です。現在は爆発からおよそ2000年経った姿を観測しているとみられています。

チャンドラのX線画像(青、緑、赤)には超新星爆発の衝撃波と、数百万度のガスが広がる様子が写し出されています。ハッブルが捉えたのは残骸の中にある明るく茶色い部分で、濃密なガスと塵が照らし出されて見えています。

■超新星残骸「DEM L71」

超新星残骸「DEM L71」

「SNR 0505.7-6752」とも呼ばれるDEM L71は、ハッブルの画像では外側の細いフィラメント構造(赤)しか見ることができません。チャンドラが撮影したX線画像では、白色矮星が破壊された際に生じた外側の衝撃波(赤や白)と、その内側にある鉄とケイ素(青と緑)からのX線によって、水滴のような形をした超新星残骸の姿が見えてきます。

■超新星残骸「DEM L238」

 

超新星残骸「DEM L238」

DEM L238も白色矮星によって引き起こされたIa型超新星の残骸です。ハッブルは超新星残骸の外側にある冷たいガスの輝き(赤)を、チャンドラは数百万度の熱いガスからのX線(青、緑、明るい赤)をキャッチしています。

■超新星残骸「N132D」

超新星残骸「N132D」

最後のN132Dは、大マゼラン雲のなかでもX線では最も明るい超新星残骸です。短命に終わった日本のX線天文衛星「ひとみ」も、機器の較正中にN132Dを観測しています。

N132Dには酸素が多く存在していることが知られています。私たちが今この瞬間にも呼吸している酸素は、N132Dのような超新星爆発によって宇宙にもたらされたと考えられています。チャンドラが捉えたX線(青や緑)の分布を見ると、ハッブルが撮影したフィラメント(赤)に沿って、爆発の衝撃波によって加熱された高温のガスが存在している様子がわかります。

 

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Image: Enhanced Image by Judy Schmidt (CC BY-NC-SA) based on images provided courtesy of NASA/CXC/SAO & NASA/STScI.
Source: Chandra
文/松村武宏

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