2年半前の深夜に関西地方を中心として観測された火球(非常に明るい流星)の軌道を逆算した結果、ある小惑星の一部だったことが判明したとする研究結果が発表されました。
■地球に接近する潜在的に危険な小惑星「2003 YT1」の破片だった
2017年4月29日の深夜1時前(日本時間)、滋賀県から京都府にかけての上空に1つの火球が出現しました。火球を生み出した天体は差し渡し2.7cmほど、重さは29グラムという小石サイズだったと推定されています。
今回、国立天文台の春日敏測氏らの研究チームは、流星や大気現象などの観測を目的とした観測ネットワーク「SonotaCo Network」によって共有された各地の火球の画像をもとに、火球となって消えた天体がどこからやってきたのか突き止めることを試みました。
軌道を逆算した結果、火球となった小さな天体は、地球接近小惑星「(164121) 2003 YT1」の破片だったことが判明しました。2003 YT1は直径2kmほどの小惑星で、10分の1程度(直径210m)の衛星を従えていることが地上からのレーダー観測によって確認されています。
■小惑星のなかには長い尾を引くようなものも
破片がどのようにして2003 YT1を離れて地球の大気圏へ突入したのかは不明ですが、小惑星のなかには塵などを放出することで彗星のように尾を引く「ゴールト(6478 Gault)」のような存在も知られています。
また、現在NASAの小惑星探査機「オシリス・レックス」によるサンプル回収地点の検討が進められている小惑星「ベンヌ(101955 Bennu)」でも、粒子が放出される様子がオシリス・レックスによって撮影されています。小惑星から破片が飛び出すことは、意外とめずらしくない現象なのかもしれません。
なお、2003 YT1は地球に衝突する可能性がある小惑星のひとつに数えられており、その確率は「今後1000万年間で6パーセント」と予測されています。欧州宇宙機関(ESA)によると、2003 YT1のように直径が1kmを上回る小惑星が地球に衝突する確率は「100万年~3億年に1回」とされています。
Image: SonataCo Network
Source: livescience - ソノタコネットワーク
文/松村武宏