現在の人類は、太陽系の外に存在する天体を直接調べる方法を持っていません。他の恒星を周回する太陽系外惑星については「大気にどんな分子が含まれているか」を理解できるようになってきましたが、系外惑星がどんな物質でできているのか、その内部はどうなっているのかについては、まだまだ未知の世界です。
■系外惑星の痕跡は地球によく似た性質を示していた
今回、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の大学院生Alexandra Doyle氏らは、地球に似た岩石質の系外惑星と太陽系の惑星が「化学的にどれくらい近いのか」を探るために、地球から200光年~665光年離れた6つの白色矮星に残された系外惑星の痕跡を調べました。
白色矮星は、太陽の8倍よりも軽い恒星が水素を核融合し尽くす過程でふくれ上がって赤色巨星となり、周囲にガスを放出したあとに残される天体です。もはや核融合で輝くことはなく、冷えていくいっぽうであるため、恒星としては死を迎えた姿と言えます。
白色矮星の大気に含まれる鉄、酸素、ケイ素、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムといった地球でも馴染み深い元素について調べた結果、かつて恒星として輝いていた頃の白色矮星を周回していた岩石質の系外惑星は、地球や火星といった太陽系の惑星とよく似た化学的性質を持っていたことがわかりました。
系外惑星の性質が地球に似ているとすれば、そのなかにはマントルの対流によってもたらされるプレートテクトニクス(プレート運動)や、コアのダイナモ効果による磁場などが生じている惑星があるかもしれません。プレートテクトニクスや磁場は生命活動を支える要素でもあるため、そうした惑星には地球にみられるような生命の存在も期待されます。
■系外惑星の化学組成を推定する思いがけないアイディア
かつて存在していた系外惑星の化学組成を調べるために白色矮星を観測するというDoyle氏らが編み出した方法は、「太陽系の惑星にみられる化学的性質が宇宙では普遍的かどうか」を知るためのものでした。
のちに白色矮星となる恒星を惑星が周回していた場合、赤色巨星化した段階で飲み込まれるなどして、いずれ破壊されてしまうと考えられています。壊された惑星の破片はやがて白色矮星の重力につかまり、その内部に飲み込まれて外からは見えなくなってしまいます。
10月18日付で「サイエンス」に掲載された論文では、白色矮星は地球と同じくらいのサイズに太陽の半分の質量が押し込められているために表面の重力がとても強く、ヘリウムよりも重い元素は速やかに内部へと沈みこんでしまうはずが、観測対象となった白色矮星の大気には重い元素が含まれており、破壊された系外惑星について知ることが可能だったとしています。
数光年以上離れた場所にある系外惑星の化学組成を直接知ることはまだできませんが、今回の研究によって、岩石質の系外惑星については地球とよく似た性質を持っている可能性が高まりました。打ち上げまであと1年半ほどに迫ったNASAの次世代宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」をはじめ、今後の系外惑星探査によってもたらされる成果にも注目です。
Image: Mark Garlick
Source: UCLA
文/松村武宏