「ハッブル」宇宙望遠鏡が撮影した「かに星雲」の画像に、夜空を移動していく小惑星が写り込んでいるのが見つかりました。
■14年前の撮影データから市民ボランティアが発見
こちらのハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたかに星雲の中心付近の画像をみると、左下から右上にかけて、ところどころ途切れた曲線のように見える白い軌跡が写り込んでいるのがわかります。この曲線は、地球からおよそ6500光年離れているかに星雲よりもずっと手前、太陽系内を移動する小惑星によって描き出されています。
偶然写り込んだこの小惑星は、2001年に見つかった「2001 SE101」(小惑星番号190838)です。NASA・ジェット推進研究所(JPL)のデータベースによると直径は2km弱で、火星と木星の間にある小惑星帯にあり、太陽を3年半ほどかけて公転しています。
小惑星の痕跡を見つけたのは、ドイツのMelina Thévenot氏。今年の6月に欧州宇宙機関(ESA)などによって始められた市民参加型のボランティアプロジェクト「Hubble Asteroid Hunter」で画像をチェックしていたところ、2005年に撮影されたかに星雲の画像のなかに、弧を描く小惑星の軌跡が写り込んでいるのを見つけたのです。イマジネーションを触発されたThévenot氏は、ハッブルが撮影したオリジナルの画像を自ら処理して、冒頭に掲載した印象的な作品に仕上げました。
Hubble Asteroid Hunterとは、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した数多くの画像に写り込んでいる小惑星の軌跡を、一般市民の手を借りて人力でピックアップするというボランティアプロジェクト。ESAによると、これまでに1900人を超える市民ボランティアによって11万枚近くの画像がチェックされ、すでに30万を超える小惑星の軌跡が発見されたということです。
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Image: ESA/Hubble & NASA, M. Thévenot (@AstroMelina)
Source: ESA
文/松村武宏
Last Updated on 2022/10/13