土星の衛星「エンケラドゥス」から宇宙空間へ噴出した氷粒に、これまで未確認だった有機化合物が含まれていたことがわかりました。NASAのジェット推進研究所(JPL)と欧州宇宙機関(ESA)から10月2日付で発表されています。

カッシーニが撮影した土星の衛星「エンケラドゥス」の疑似カラー画像(Credit: NASA/JPL/Space Science Institute)

■アミノ酸につながる有機化合物の存在を確認

見つかったのは、窒素を含むアミンや、酸素を含むカルボニル基を持った有機化合物です。これらの化合物は、地球ではアミノ酸の生成にも関与することが知られています。

今回見つかった有機化合物は、Nozair Khawaja氏らの研究チームによって、2017年にミッションを終えた土星探査機「カッシーニ」による土星の「E環」と呼ばれる環の観測データを解析することで発見されました。

E環は土星の環のなかでも外側にあり、淡くて幅が広いという特徴があります。この環はエンケラドゥスから噴出した氷粒でできているため、E環を調べることでエンケラドゥスに存在する物質などを間接的に知ることができるのです。

カッシーニが土星の影に入ったときに撮影した環。一番外側で淡く青白い光を放っているのがE環(Credit: NASA/JPL-Caltech/SSI)

エンケラドゥスの分厚い氷の下には液体の水(海)がたたえられているとされており、その海底には熱水を噴き出す噴出孔があると考えられています。研究に参加したFrank Postberg氏は、今回の発見が熱水噴出孔のもたらすエネルギーによってアミノ酸が生成されている可能性を示唆しており、エンケラドゥスの環境が生命の存在に適している可能性をさらに高めるものだとしています。

■研究チームはより複雑な有機化合物も発見

Khawaja氏らの研究チームは昨年にも、エンケラドゥスを由来とする有機化合物の高分子が見つかったことを発表しています。当時の研究によると、高分子はエンケラドゥスの氷の地殻にできた割れ目にしみ込んだ海水の表面にを作っていて、海底から噴出したガスの泡が海面で弾けたときに宇宙空間へ放出されたものが検出されたと考えられています。

いっぽう、今回発見されたのは水溶性の有機化合物でした。海水に溶け込んでいた有機化合物が海面から蒸発して氷粒に凝縮し、その後に宇宙空間へと放出されてE環を形成した結果、カッシーニの観測データから検出されたものとみられています。

今回の研究にもとづくエンケラドゥスの南極付近の模式図。地下の海(ocean)に溶け込んだ有機化合物(organics)が、氷の地殻(crust)の割れ目にある氷粒(ice grains)に凝縮し、ジェットとともに宇宙空間へ放出される(Credit: NASA/JPL-Caltech)

 

Image: NASA/JPL/Space Science Institute
Source: NASAESA
文/松村武宏