国立天文台は9月27日、観測史上最も遠くにある銀河団(複数の銀河が集まっている宇宙でも最大級の天体)が見つかったことを発表しました。
■マウナケア山頂にある望遠鏡群によって初期の銀河団を発見
銀河団が見つかったのは「くじら座」の方向、地球からおよそ130億光年先の宇宙です。研究チームはこの銀河団を「z66OD」と呼んでいます。今回の観測によって、z66ODには12個の銀河が存在することが明らかになりました。
こちらの画像は、国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」によって撮影された原始銀河団z66OD付近の様子です。背景に重ねて合成されている小さな四角のなかには、今回確認された12個の銀河(赤に着色)が拡大表示されています。画像全体が示す範囲は、130億光年先の宇宙においては約2億光年四方に及びます。
背景に見える青色のグラデーションはz66ODにおける銀河の密度を示したもので、実際にこのような青い光が観測されるわけではありません。z66ODには、この時代の宇宙における平均に対して15倍もの密度で、銀河が集中的に分布していることがわかりました。
なお、今回の観測には国立天文台のすばる望遠鏡をはじめ、W.M.ケック天文台の「ケック望遠鏡」、ジェミニ天文台の「ジェミニ北望遠鏡」といった、ハワイのマウナケア山頂に並ぶ大型望遠鏡群が参加しています。
■12個の銀河にはあの「ヒミコ」も
原始銀河団z66ODには、10年前にすばる望遠鏡が発見した巨大ガス雲天体「ヒミコ」(名前は邪馬台国の卑弥呼から)も含まれていました。ヒミコは差し渡し5万5000光年のサイズがあり、当時の宇宙でもかなり大きな天体であったと考えられています。
今回の研究によって、ヒミコの位置はz66ODの中心から5000万光年離れていることが判明しました。ヒミコの発見者であり今回の研究にも参加した国立天文台の大内正己氏は発表のなかで、ヒミコのように巨大な天体が銀河団の中心からこれほど離れた位置にあることに「驚きました」と述べています。
また、z66ODを構成する銀河では、同時代・同規模の銀河に対して5倍のペースで星が形成されていることもわかりました。研究に参加した国立天文台の藤本征史氏は今後、原始的な銀河団に見られる「塵が豊富な銀河」がz66ODにも存在するかどうかを「アルマ望遠鏡」などで観測したいと語っています。
Image Credit: 国立天文台/Harikane et al.
https://www.nao.ac.jp/news/science/2019/20190927-subaru.html
文/松村武宏