米航空宇宙大手のボーイング社は5月27日、米航空宇宙局(NASA)から、国際宇宙ステーション(ISS)への宇宙飛行士の商業輸送契約を受注したと発表した。これまで有人宇宙飛行はスペース・シャトルやロシアのソユーズ宇宙船など、国の機関が開発、運用を主導する宇宙船が担っており、民間の企業が開発、運用する宇宙船によって行われるのは史上初のことになる。

NASAではかねてより、ISSへの物資や宇宙飛行士の輸送を、NASAのロケットや宇宙船を使うのではなく、民間企業に委託しようという構想を持っていた。その後、2006年に「商業軌道輸送サービシズ(COTS、Commercial Orbital Transportation Services)」と名付けられたプログラムが立ち上げられ、構想を実現に移す動きが始まった。

これまで、すでに無人の補給船については計画は達成されており、スペースX社がファルコン9ロケットとドラゴン補給船を、オービタル・サイエンシズ社がアンタレス・ロケットとシグナス補給船の開発に成功している。また、両社は実際にISSへ貨物を輸送する契約(CRS、Commercial Resupply Services)をNASAとの間で結んでおり、その契約の下で、現在も定期的に輸送船が打ち上げられている。

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一方COTSでは、貨物輸送とは別に、有人宇宙船と、それを打ち上げるロケットの開発プログラムである商業有人宇宙船開発(CCDev、Commercial Crew Development)も並行して進められている。これまでに3回のラウンドを経て、ボーイング社とスペースX社の2社が残り、第4ラウンドにあたるCCtCAP(Commercial Crew Transportation Capability)プログラムの下で、宇宙船とロケットの開発を進めている。

今回の契約は、このCCtCAP契約の一部にあたる。

ボーイング社が開発しているのはCST-100と呼ばれるカプセル型の宇宙船で、最大7人の宇宙飛行士を乗せ、ISSなどが周る地球低軌道に飛行することができる。打ち上げには、ロッキード・マーティン社が開発したアトラスVロケットが使用される。

今回の契約では、ISSに向けて最低2回、6回程度の飛行を実施することが定められている。なお、契約が実行される前には、宇宙船の開発に設けられたマイルストーンをクリアし、最終的に自社による無人の試験飛行と、最低1回の有人での試験飛行を実施することが定められている。この試験飛行では、宇宙船とロケットの打ち上げから軌道変更、ISSへのドッキング、地球への帰還といった一連の流れを実施し、NASAに機能や性能、安全性などを証明しなければならない。またこの打ち上げには、最低1人のNASA宇宙飛行士を乗せることも条件として付け加えられている。

また、スペースX社が開発しているドラゴンV2宇宙船についても、今年末に今回のボーイング社と同様の契約を受け取る予定だという。ドラゴンV2は今年5月6日に、発射台からの緊急脱出試験に成功している。

CST-100もドラゴンV2も、初打ち上げは2017年に予定されている。なお、どちらの宇宙船が先に実際に宇宙飛行士を乗せて打ち上がることになるかはまだ決まっていないとされる。

現在米国は有人宇宙船を保有しておらず、ISSへの宇宙飛行士の輸送はロシアのソユーズ宇宙船に依存し続けている。NASAは今回の声明の中で「もし2016会計年度以降、CCtCapへの予算が満額受け取れなければ、NASAはこの計画を遅らさざるを得ず、ロシアへの依存を続けねばならない」と、国民や議会に対して支援を訴えている。

 

■Boeing Awarded First-Ever Commercial Human Spaceflight Mission
http://boeing.mediaroom.com/2015-05-27-Boeing-Awarded-First-Commercial-Human-Spaceflight-Mission

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