AKATSUKI Re-injection to Venus orbit
Image credit: sorae.jp
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月6日、2010年12月7日に金星を回る軌道への投入に失敗した「あかつき」について、今年12月7日に再び、金星を回る軌道への投入を試みると発表した。「あかつき」はすでに設計寿命を超えており、また予定より太陽に近付く軌道を回っているため、探査機が受ける熱の量も大きなものになっているが、関係者は「確実に軌道投入は成功するだろう」と、自信と期待を見せる。
「あかつき」は日本初の金星探査機として2010年5月21日に打ち上げられ、同年12月7日に金星を回る軌道への投入に挑んだ。しかし、何らかの原因で噴射が途中で止まり、金星周回軌道に入ることができなかった。再び太陽を回る軌道へ戻ってしまった。その後の調査で、投入時に噴射する主推進エンジンの、燃料配管にあるバルブが問題を起こしたことでエンジンが破損し、探査機の姿勢が崩れたため噴射が停止されたものと考えられている。
「あかつき」はその後、太陽の周りを回りつつ、太陽の観測なども行いながら、再び金星の軌道に入れる機会を狙っていた。そして探査機と金星、太陽との位置関係などの条件から、今年12月7日に実施することが決定された。
 今回の再挑戦にあたっては、前述のように主推進エンジンが壊れている可能性が高いことから使われず、探査機の姿勢制御に使われている小型のエンジンで代用される。エンジンの噴射時間は20分間ほどになるという。
 主推進エンジンは500Nの推力を出せるが、この小型エンジンは1基あたり23Nほどしか出せない。また、本来は姿勢を制御するために短時間だけ噴射するように造られているため、長時間噴射し続けると、エンジンに燃料を供給するためのガスの圧力が下がっていくため、平均的には20Nほどしか出せないという。そこで4基を同時に噴射することになる。「あかつき」にはこの小型エンジンが、主推進エンジンがついている面に4基、高利得アンテナがついている面に4基の計8基が装備されており、今後投入時に探査機が受ける熱の具合などが検討され、どちらの面の4基を使うかが決定されるという。
 無事に軌道投入に成功すれば、金星の地表から最も近い点(近金点)が約300km、最も遠い点(遠金点)が約50万kmの楕円軌道に入ることになる。その後、本格的に観測を開始する際には、遠金点が約32万kmの軌道になるが、もともとは近金点300km、遠金点8万kmの軌道に入るはずだったため、それと比べ、とても長細い軌道になる。また軌道を1週する期間(軌道周期)は、当初予定の30時間から、8~9日ほどにもなるという。
 このため、当初予定していたような高い解像度で金星を観測できる機会が少なくなり、またスーパー・ローテーションと呼ばれる金星の大気運動との同期しての観測ができなくなるなどの問題が生じる。一方で、1週間連続でグローバル撮像が可能になり、また大規模現象を把握しやすくなるといった利点も生まれるという。
 投入後は約3か月をかけて観測機器のチェックなどを行い、2016年の春に遠金点高度を32万kmに下げ、そこから本格的な観測が始まるという。ミッション期間はまず約2年間ほどと見込まれており、また探査機の状態によっては、最大4年まで延ばせる可能性があるという。
 しかし、金星の周回軌道投入に向けては難関が待ち受ける。太陽の熱だ。これまで軌道の中で太陽に最も近付く点を通過(近日点通過)したことは7回あったが、そのたびに想定を超える熱環境にさらされ、各機器が影響を受けている。また探査機の断熱材の劣化も進んでおり、温度の上昇に拍車をかけている。さらに今後、今年2月11日と8月29日にも近日点通過が待ち受けており、これに耐え抜いていかなければならない。
 また、今回の噴射で探査機に残された推進剤の大部分を使ってしまうため、もし今回も失敗すれば、次は無いという。
 しかし、「あかつき」のプロジェクト・エンジニアを務める石井信昭さんは「軌道投入は必ずできると思っています。何かが起こる可能性は有り得ると思っていますが、現在の状態からして、確実に軌道投入は成功するだろうと考えています」と自信を見せる。
 また観測機器ついて、プロジェクト・サイエンティストの今村剛さんは「観測装置には、悲観する材料はあまりありません。観測機器は探査機の中でも放熱面に近く、温度的には涼しく快適なところで保管された状態でした。もちろん放射線による劣化も考えられますが、それに関しても元々の想定内です。ただ、何年間も電源を入れていない機器を、改めて立ち上げるときには相当緊張すると思いますが、もし立ち上がらなければ、何らかの想定外のことが起きた、ということになります」と語る。
「あかつき」が軌道投入に挑む時刻はまだ未定で、今後、地上のアンテナや、投入後の探査機の運用といった都合を検討して決定するとのことだ。また軌道への投入時には地球から可視状態(通信が取れる状態)にあるため、地球と金星との距離の都合上約8分遅れにはなるが、探査機からのデータがほぼ準リアルタイムで送られてくるという。
「あかつき」のプロジェクト・マネージャーの中村正人さんは「これは5年前に成功していて当然のミッションですので、大変忸怩たるものがあります。2010年の失敗はJAXAの資産として生かされていて、「はやぶさ2」の改良が加えられています。今回幸いにして、5年目にして再びチャンスが与えられましたが、我々としてはお祭り騒ぎするのではなく、粛々と進めていきたいと考えています。投入日がたまたま5年前と同じ日になりましたが、感傷的にならず、冷静に進めていきたいと考えています」と、意気込みを語った。
■JAXA | 金星探査機「あかつき」による今後の金星周回軌道再投入及び観測計画について
http://www.jaxa.jp/press/2015/02/20150206_akatsuki_j.html

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