NASA新型宇宙船オリオン、無人の飛行試験ミッションに成功

Delta IV Heavy launches Orion EFT-1
Image credit: NASA/ Sandy Joseph/Kevin O’connell
 米航空宇宙局(NASA)は12月5日、開発中の新型宇宙船オリオン(オライオン)の無人飛行試験ミッション(EFT-1)に成功した。開発が始まってから約10年を経て、ようやく打ち上げられたオリオンは、スペースシャトルが引退してから約3年半ぶりに打ち上げられた、米国の有人宇宙船ともなった。NASAは「オリオン宇宙船と、米国の宇宙探査の新たな時代にとっての夜明けだ」と声高々に宣言した。
 オリオン宇宙船EFT-1は、米ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社の大型ロケット、デルタIVヘビー・ロケットに搭載され、米東部標準時2014年12月5日7時5分(日本時間2014年12月5日21時5分)に、フロリダ州ケープ・カナヴェラル空軍ステーションのSLC-37Bから離昇した。ロケットは順調に飛行し、約17分39秒後に地球を回る軌道に乗った。
 地球を1周した後、ロケットの第2段エンジンに再点火され、オリオンと第2段は最大高度約5,800kmにまで達する楕円軌道に乗り移った。無人とはいえ、有人宇宙船が地球低軌道を越えて、これほどの高度にまで達するのは、実にアポロ17ミッションから42年ぶりのことだ。
 宇宙船はヴァン・アレン帯(内帯)を通過し、打ち上げから約3時間5分後に最大高度に到達した。その後は地球に向かって降下を開始し、打ち上げから約4時間13分後には、オリオンのクルー・モジュール(帰還カプセル)が大気圏に再突入した。最大で2,200度の高熱を浴びつつ無事に切り抜け、パラシュートを開きつつ緩やかに降下し続け、12月6日1時29分(日本時間)に、カリフォルニア州の南の沖の太平洋上へ着水した。飛行時間は約4時間24分であった。
 その後宇宙船内のパワーが落とされ、米海軍の艦艇USSアンカレッジによって回収された。同艦は現地時間の月曜に、カリフォルニア州サン・ディエゴに帰港する予定だ。
 オリオン宇宙船はNASAとロッキード・マーティン社が開発中の宇宙船で、スペースシャトルの「次」に当たるNASAの宇宙船だ。地球低軌道までにしか人を運べなかったスペースシャトルとは違い、オリオンはアポロ宇宙船のように月へ、そしてさらにその先の火星や小惑星へも人を運ぶことができる宇宙船として開発が進められている。宇宙飛行士が乗るクルー・モジュールの最大直径は5m、高さは3.3mほどで、アポロ宇宙船より大きい。最大で4人までの宇宙飛行士が乗ることができる。
 オリオンは2004年、当時のブッシュ大統領が発表した「宇宙探査ビジョン(Vision for Space Exploration)」に従い、NASAが立てた「コンステレーション計画」の中で開発が決定された。オリオンの開発は順調ではあったものの、並行して開発されていた新型ロケットのアレスIとアレスV、そして月着陸船アルタイルの開発が難航し、計画は大幅に遅れた。
 そして2010年、次の大統領であるオバマ大統領は、コンステレーション計画の中止を命じる。だが、その中でオリオンのみは「国際宇宙ステーション(ISS)からの緊急帰還用の宇宙船」という名目で生き残り、さらに後に、宇宙ステーションとの往復だけではなく、月や火星、小惑星へも飛行できる多目的な宇宙船を目指して開発が継続された。それがこんにちのオリオン宇宙船である。
 今回のミッションはオリオンにとって初の宇宙飛行だった。そのため宇宙飛行士は乗っておらず、またスラスターや太陽電池、生命維持システムなどが載るサービス・モジュールや、打ち上げ時の緊急脱出システムは、実機と同じ質量で造られただけのダミーだった。
 一方、宇宙飛行士が乗ることになるクルー・モジュールは本番同様に造られており、宇宙空間の高い放射線や、温度環境の変化にどう影響するかなどが調べられた。またクルー・モジュールの底部にある耐熱シールドや、パラシュートなども実機同様に装備され、試験が行われた。今回飛行したオリオンは、実機と比べると55%ほどの完成度だという。
 今回のEFT-1ミッションの飛行で、オリオンには月往復飛行ができる能力があることが、ほぼ実証された。また火星や小惑星へも行ける船を手に入れたともいえよう。
 今後、EFT-1ミッションで得られたデータを基に、さらにオリオンの開発が進められることになっている。そして2018年11月には探査ミッション1(EM-1、Exploration Mission 1)が実施される予定だ。EM-1でもオリオンは無人だが、サービス・モジュールなどは本物が使われ、また打ち上げるロケットには、現在オリオンと並行して開発が行われている新型ロケットのスペース・ローンチ・システム(SLS)が使われる。オリオンは地球から月まで行き、月の裏側を回って地球に帰還する「自由帰還軌道」で飛行し、オリオンの全システムと、月往復飛行の技術、そしてSLSの能力が試験される。
 EM-1が無事に完了すれば、いよいよ次は、実際に宇宙飛行士を乗せた有人飛行が行われる予定だ。現時点で実施は2021年以降になるとされている。目的地は月だが、月面には降りず、事前に月の軌道まで引っ張ってきた小惑星に降り立って探査を行うという構想が進められている。そこで深宇宙での探査活動に関するノウハウを積み、2030年代に火星への有人飛行に挑む予定だ。
 技術や資金の問題から、実現するかは定かではない。しかし今回のミッションの成功で、実現に向けた、大きな一歩を踏み出したことだけは間違いないと言えよう。
写真=NASA。
■NASA’s New Orion Spacecraft Completes First Spaceflight Test | NASA
http://www.nasa.gov/press/2014/december/nasa-s-new-orion-spacecraft-completes-first-spaceflight-test/#.VIJ4V8m3JtZ

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