10月21日に打ち上げられた、通信衛星エクスプレースAM6を搭載したプロトンM/ブリーズMロケットが、当初予定していた軌道へ衛星を投入することができなかったことが、10月28日にわかった。ただし、衛星のスラスターを使うことで挽回は可能だとされる。

エクスプレースAM6は現地時間2014年10月21日21時9分32秒(日本時間2014年10月22日0時9分32秒)、プロトンM/ブリーズMに搭載され、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の81/24発射台から打ち上げられた。プロトンMは順調に飛行し、約10分後にブリーズM上段を分離した。その後、ブリーズMは9時間超にわたって飛行し、エクスプレースAM6を分離した。

その後、ロシア連邦宇宙局(ロスコスモス)や、衛星を製造したISSレシェトニェーフ社などは「打ち上げは成功」と発表した。

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しかし、プロトンM/ブリーズMを製造しているフルーニチェフ社が打ち上げ直後に発表した飛行シーケンスから、エンジンの噴射停止時刻などの実測値が、予測値から決して小さくない誤差を出していたことが判明。またその誤差は、プロトンMではなく、上段のブリーズMの飛行過程で起きていた。

ロシアの宇宙開発系フォーラムであるノーヴァスチ・カスモナーフティキに投稿された計算結果によれば、この誤差は50m/sの不足に匹敵するとされた。この時点で、ブリーズMに何らかの不具合が起き、打ち上げは不完全だったのではという疑惑が生じた。

さらに、その後米国が公表した軌道データで、さらにその疑惑は深まる。ロシアは2013年12月26日に、エクスプレースAM6の同型機と思われるエクスプレースAM5を打ち上げているが、その投入軌道と、今回の軌道とは、誤差というにはあまりにも大きな違いが生じていた。

ただ、エクスプレースAM5とAM6がまったくの同型機であるという確証はなく、また飛行シーケンス自体が変わった可能性もあるため、この時点では疑惑は疑惑のままであった。

しかし10月28日、ロスコスモスは発表した声明の中で、エクスプレースAM6が、当初予定していた軌道には入っていないということを認めた。ただし衛星の状態は正常であり、また衛星のスラスターによって、計画していた静止軌道への投入は可能であると付け加えている。

また専門紙Space Newsが報じたところによれば、衛星を運用するカスミーチェスカヤ・スヴャース社の関係者の話として、衛星の静止軌道投入と、運用開始は2015年7月1日を見込んでいるとのことだ。打ち上げ直後、衛星を製造したISSレシェトニェーフ社は2015年初頭に静止軌道に入ると発表しており、つまり軌道の挽回のため、およそ半年ほど静止化と運用開始が遅れるということになる。また、衛星のスラスターを余計に使うことで、軌道上での運用可能期間も短くなるはずだが、その見通しについては現時点で明らかにされていない。

現時点では、ロシア側からこれ以上の発表は行われていない。ブリーズMに何かが起きたことは間違いないが、その詳細についてもまだ不明だ。

 

■ФЕДЕРАЛЬНОЕ КОСМИЧЕСКОЕ АГЕНТСТВО (РОСКОСМОС) - Спутник «Экспресс-АМ6» доберется до рабочей орбиты с использованием штатной схемы довыведения
http://www.roscosmos.ru/21060/

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