H-IIA F24
Image credit: JAXA
 三菱重工業株式会社は17日、ロケット打ち上げ輸送サービス事業に関する記者会見を、東京都品川にある三菱重工本社で開催した。三菱重工によるH-IIA、H-IIBロケットの現状と、世界の競合ロケットについて解説。また先ごろ開発が始まった新型基幹ロケットへの取り組みも紹介、価格面と信頼性で、スペースX社のファルコン9ロケットなどと対抗する意欲を示した。
 三菱重工はこれまで、宇宙開発事業団(NASDA)と、後に宇宙航空研究開発機構(JAXA)主導の下、国の実用衛星などを打ち上げる基幹ロケットとして、1975年のN-Iに始まり、N-II、H-Iと開発を行ってきた。これらは米国の技術を導入しつつ造られたものであったが、1994年に登場したH-IIで純国産化に成功。そして2001年にはH-IIのコストダウンをめざし、大幅な改良を加えたH-IIAが登場した。以来、H-IIAは24機が打ち上げられ、6号機で失敗した以外は安定した成功を続けている。また2009年にはHTVの輸送用に打ち上げ能力を高めたH-IIBも登場し、4機すべてが打ち上げ成功を収めている。両機を合わせた打ち上げ機数は28機で、成功率は96.4%と高い数字を維持している。
 また、H-IIA/Bは当初JAXAが打ち上げを取り仕切っていたが、H-IIAは13号機から、H-IIBは4号機から、その運用が三菱重工へ移管され、つまり民営化された。そして商業衛星の打ち上げ受注獲得に向けて努力が続けられているが、現時点でカナダの衛星打ち上げを1機受注したのみであり、苦しい勝負を強いられている。
 現在、世界の商業衛星打ち上げ市場では、ロシアのプロトンMロケットと、欧州のアリアン5ロケットが、そのシェアの大半を握っている。これらは価格面や信頼性、また実績でもH-IIAより優位に立っている。そして何より、スペースX社のファルコン9の存在が大きくなりつつある。
 スペースX社はIT長者のイーロン・マスク氏によって設立された会社で、わずか10年で、H-IIAほどの規模を持つ、ファルコン9を造り上げた。ファルコン9は低価格が売りで、続々と打ち上げ受注を取り始めている。
 会見に立った三菱重工の防衛・宇宙ドメイン宇宙事業部 技監・技師長の二村幸基氏は「ファルコン9は脅威を感じている。ライバルではなく、脅威だ」と強調。ファルコン9の台頭に危機感を募らせた。
「市場として、主役となるロケットがあれば、衛星がそれにインターフェイスを合わせていく傾向がある。これまではアリアンを睨んで手を打てばよかったが、少しずつファルコン9にも目が向きつつあり、我々としては両方を視野に入れなければならない」(同氏)。
 ただ、「唯一少しだけ安心しているのは、もともと5月に予定していたオーブコム衛星の打ち上げが、7月まで延びたこと」とし、H-IIAの連続打ち上げ成功と、ここ最近打ち上げで天候以外の理由での延期がないことを利点として挙げ、またその高い信頼性を裏打ちする、膨大なデータと分析や評価、事故を未然に防ぐための改良、品質評価活動といった取り組みを紹介した。
 だが、H-IIAはそれ以外にも、現在の商業静止衛星の需要に十分に応えられないという問題も抱えている。開発当時の予測よりも、静止衛星が大きく、重くなってきたためだ。
 そこで三菱重工では現在、H-IIAをより市場のニーズに対応させるため、打ち上げ能力を向上させる「高度化」をJAXAと共に実施している。そしてH-IIAの後継機として、JAXAによる新型基幹ロケットの開発も今年度から始まり、三菱重工は主契約者として参画している。新型基幹ロケットは価格がH-IIAの半分となり、契約から打ち上げまで3ヶ月という短い期間で実施できるようなり、またモジュラー化による様々な衛星にシームレスに対応できるようになるという。
 二村氏は「2020年辺りに、ロシアや欧州、インド、中国も新しいロケットを投入してくる。次の日本のロケットを投入する時期が遅れれば、市場の主役を取れない」とし、新型基幹ロケットの開発を予定通り進め、2020年に初打ち上げを実施する意欲を述べた。
 だが、日本の場合はロケットの高価格、使いにくさ以外にも、打ち上げ場所である種子島宇宙センターに、大型の衛星を直接搬入できないという問題も抱えている。これは種子島空港の滑走路が短いためで、それによりセントレアや北九州空港などで一旦衛星を降ろした後、船で搬入するという面倒な方法が採られている。さらに日本の法律上、クレーンなどの免許を必要する機器を操作する場合、日本で発行されている免許を持っていない限り扱うことができず、海外の技術者が自分たちの衛星を自分で触れないという事態も生じている。これについて同社の小笠原宏部長は「経済産業省などに緩和や支援をお願いしている」とし、他国の射場と同じ作業環境を目指すとした。

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