SpaceShipOne first space flight
Image credit: Scaled Composites
 今から10年前の2004年6月21日、スケールド・コンポジッツ社が開発した宇宙船スペースシップワンが、高度100kmの宇宙空間に到達した。民間企業が自力で開発した有人宇宙船が宇宙に触れたのは史上初のことだった。
 高度100km――、それは宇宙の入り口である。そこを超えることができた人間は数少ない。宇宙船は国家の持ち物であり、多額の税金を使って運用される。それに乗ることができるのは、ごく限られた人のみであった。
 そうした状況を打ち砕くため、1996年5月に「Xプライズ」が創設された。これは個人でも団体でも企業でも、とにかく国のお金を一切使わず宇宙船を造り、3名の人間を乗せて高度100kmに到達すること。かつ、2週間以内に2回の飛行を行うことを条件とし、達成すれば賞金が与えられるというものであった。
 その旗振り役となったのはピーター・ディアマンディスという人物で、彼は小さい頃からの宇宙好きで、マサチューセッツ工科大学で宇宙工学を学び、20代で宇宙ヴェンチャーを立ち上げたりもしている。
 このXプライズ(後にこの賞に多額の寄付をしたアニューシャ・アンサリとアミール・アンサリの名前を冠してアンサリXプライズに改称)には、世界各地から26のチームが名乗りを上げた。その中で白眉だったのは、スケールド・コンポジッツという会社であった。
 スケールド・コンポジッツ社は、天才とも称される有名な航空機設計者、バート・ルータンが率いている会社で、世界初の無着陸・無給油での世界一周を成し遂げたヴォイジャーや、タンデム翼のプロテウスなど、数多くの独創的な飛行機を造ってきた。そんな彼と、スケールド・コンポジッツ社が開発したのは、途中まで飛行機で宇宙船を運び、そこから宇宙船のロケットに点火し宇宙空間まで飛行、帰りはグライダーで滑走路に着陸するというものであった。運搬を務める飛行機はホワイトナイト(WhiteKnight)、そして宇宙船はスペースシップワン(SpaceShipOne)と名付けられた。
 両機と、そしてロケットモーターはそれぞれ単独での試験を積み重ね、2003年5月20日にホワイトナイトとスペースシップワンは初めて結合され、空に舞い上がった。まずはずっと結合された状態での飛行を行い、続いて空中でスペースシップワンを切り離し、グライダーとして滑空飛行する試験が行われた。そして2003年12月17日にスペースシップワンのロケットモーターを点火させ、動力飛行を実施。宇宙飛行に向け、着実に試験を積み重ねた。そして2004年6月21日、いよいよその日がやって来た。
 太平洋夏時間2004年6月21日6時47分、スペースシップワンを積んだホワイトナイトは、カリフォルニア州のモハーヴェ空港を離陸した。スペースシップワンに搭乗したのはテスト・パイロットのマイケル・W・メルヴィル。彼は長年同社でテスト・パイロットを務め、バート・ルータンの盟友である。
 ホワイトナイトは順調に飛行し、やがて高度14kmに到達した。そして7時50分、スペースシップワンを分離。直後、メルヴィルはロケットモーターに点火、スペースシップワンはまっすぐ天へ向けて上昇を始めた。
 高度18kmを超えたところでウィンド・シアに遭遇、と同時に、機体が突如ロール運動を始めた。メルヴィルはなんとか修正しようと操作したが、だんだん回転率が上がり、ついにピッチ・トリムを制御することができなくなってしまった。そこでメルヴィルはバックアップ・システムに切り替え、機体を安定させつつ上昇を続けた。
 ロケットモーターの点火から76秒後に燃焼が終了、その時点で高度55kmにまで到達していた。あとは慣性に任せて、真上に投げたボールのように、放物線を描きながら上昇を続け、そしてついに100kmに到達した。本来の予定では、最終的に高度110kmにまで到達するはずだったが、上昇中に起きた問題から100.124kmになってしまった。しかし、そこは十分宇宙であった。
 空と宇宙の境界線上で、自由落下するスペースシップワンの船内は無重量状態になった。メルヴィルはチョコレート菓子のM&M’sを袋を開け、中身がふわふわと浮かぶのを楽しんだ。無重量状態は約30分間続いた。何より彼を感動させたのは、窓から見える青く丸い地球と、漆黒の宇宙空間だった。
 やがて地球への帰還の時が近づいてきた。メルヴィルは宇宙船を再突入モードに移行させた。これは主翼の後ろ側を折り、機体に対して約65度の角度まで立たせることで、降下時のスピードを抑えるというものだ。そしてスペースシップワンは大気圏に再突入した。
 機体は順調に降下し、高度17kmに達したところで主翼を通常の形態に戻し、グライダーとして飛行を始めた。上昇時に起きた問題から、再突入する位置が予定より若干ずれてしまったが、グライダーとしてのスペースシップワンはこれを修正し、そして8時14分、スペースシップワンはモハーヴェ空港の滑走路に滑り込んだ。
 アンサリXプライズの獲得条件には達していないが、この日スペースシップワンは、宇宙開発の歴史に新たな一ページを書き込んだ。そして十分な改良と用意を経て、この年の9月29日と10月4日にも高度100kmを超える飛行を達成、アンサリXプライズを獲得することになる。
 飛行を終え、スペースシップワンから地面に降り立ったメルヴィルは、詰めかけた人々にこう語った。
「それはもう本当に、とてつもない光景でした。私が今までに見てきた、どんなものにも似ていませんでした。私は圧倒されました。それはもう本当に。……まるで神の顔に触れたような感覚でした」。
■Scaled Composites: SpaceShipOne – SpaceShipOne Makes History: First Private Manned Mission to Space
http://www.scaled.com/projects/tierone/spaceshipone_makes_history_first_private_manned_mission_to_space

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